2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年8月26日

 インド産業界には動揺が見られるようであるが、政府には妥協を模索する様子はない。インド外務省は「インドがロシアからの輸入を始めたのはウクライナ紛争の始まりで伝統的な供給国が欧州向けに転換したからだ」などと主張し、インドを標的とすることは「不当で理不尽」であり、インドは「国益と経済的安全保障」を守るため必要な措置を講ずると述べている。

 8月7日、モディ首相は農業関連の会議で演説し、「インドは農民、漁民、酪農家の利益に関して妥協することは決してない」「高い代償を払う必要があるとは承知である。しかし、その覚悟はできている」と言明した。貿易交渉でも容易に妥協しない姿勢である。

中国へも〝不発〟か

 インドはこのまま耐え続けるのかもしれない。トランプの手法は通じないということである。

 インドは外部からの干渉に殊更に反発する体質である。いわんや抑制の利かないトランプの威圧に叩頭するはずもない。ここ数カ月のトランプの腹立たしい言動に対する反発もあろう。モディはプーチンのインド訪問を年内に予定している。

 ワシントン・ポスト紙の報道によれば、米国のベッセント財務長官は、中国に対しロシア石油の輸入を続けることによる関税の危険を警告したようである。しかし、仮に関税を課しても、中国は輸入を止めないばかりか、報復するであろう。トランプには対中関係の安定化を望んでいる気配があり、リスクを顧みず関税を発動するとも思われない。

 インドと中国に対する二次制裁の真の標的はプーチンであり、プーチンに対する圧力を意図したもののはずであるが、中国はもとよりインドも、ロシア石油の輸入停止に動く見通しは目下なく、不発に終わるのではないかと思われる。

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