2025年7月15日付フォーリン・アフェアーズ誌が、新アメリカ安全保障センターのケンダル・テイラーらの論文を掲載し、欧州がどれほど深く米国の軍事力に依存しているかを示し、トランプ政権が計画する在欧米軍の削減の補填について欧州と合意しておく必要があると指摘している。
トランプ政権は包括的な戦力態勢見直しを進めており、これは米軍の世界的な展開を根本的に変える可能性がある。欧州駐留米軍の大幅かつ迅速な削減が実現すれば、同盟国はロシアのさらなる侵略に対してより脆弱になるだろう。
米国の「2025年暫定国家防衛戦略指針」に関するメディア報道からは、国防総省が欧州を含む他地域から資源を転用し、同地域でより大きなリスクを受け容れることで、インド太平洋地域の軍備増強に資金を提供する意図があることが窺える。トランプ大統領はロシアを脅威と定義することに消極的で、米国とロシアの関係正常化を目指す。北大西洋条約機構(NATO)加盟国は6月の NATO首脳会議で対ロシア戦略を提示する予定だったが、トランプ大統領の同意が得られない可能性を懸念し、これを見送った。
しかしロシア軍は、もはやウクライナへの本格的な侵攻を開始した3年前のような無秩序な軍隊ではなくなっている。ルッテ事務総長が6月に述べたように、「ロシアが5年以内にNATO領土に対して確実な攻撃を仕掛けることができるという事実は明白」だ。複数の欧州情報機関も同様の結論に達している。
NATOは1949年の創設以来、軍事力を米国に過度に依存してきた。冷戦後、欧州のほとんどの軍隊が国防予算を大幅に削減したことで、この依存はさらに深まった。
現在、米陸軍はバルト諸国とルーマニアのロシア国境沿いでNATO軍を補完し、ドイツとポーランドに恒久的な基地を維持している。米海軍は、スペインの米軍基地にイージス級駆逐艦6隻を配備し、NATOのミサイル防衛を支援するとともに、バルト海での海上哨戒等、欧州海域における海上任務を担っている。
米空軍は、トルコの空軍基地をはじめドイツ、イタリア、スペイン等に戦闘・支援飛行隊を駐留させている。また、欧州は依然として、米国の空中給油機、大型輸送機等に大きく依存している。
欧州諸国が国防費を増額しているにせよ、米国が現在担っている機能を担うまでの期間は、今後10年にも及ぶ。欧州における米国のプレゼンスが縮小すれば、西側諸国は緊張緩和を優先せざるを得なくなり、ロシアにとって極めて御しやすい環境が生まれ、プーチンはロシアの目標達成能力を過大評価する傾向を強めるだろう。
プーチンは、ケーブル切断等の破壊工作といったグレーゾーン活動のさらなる拡大を図るだろう。限定的な軍事行動に出る可能性もある。威圧や核の脅威を用いてNATOにロシアの軍事行動の結果を受け入れさせることに確信を深めるかもしれない。
