2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年8月26日

 アナリストは、インドにとって最大の貿易相手国である米国との仲違いの直接の影響は限定的であり得る、なぜなら、その経済は外国貿易ではなく主として内需主導だからだと述べている。インドの対米輸出865億ドルの国内総生産(GDP)比は2%である。しかしながら、インドはAppleのような製造企業から投資を呼び込もうと努めている状況にあるので、米国との亀裂は、インド経済に対する信頼に害を及ぼしかねない。

* * *

妥協しないモディ政権

 ロシアの継戦能力に制約を課す上で、ロシアの石油収入を断つことは避けられない課題であり、トランプがロシア石油の大口輸入国であるインドに目を付けたのは間違っていない。しかし、インドによるロシア石油の輸入の停止・削減を米国による二次制裁の脅迫により実現しようとすることには問題がある。成功しない公算が大きい。

 7月18日、欧州連合(EU)は18次対ロシア制裁を決定したが、その中核を成すのはロシアの石油収入の削減に向けた規制である。西側は共通の目標の達成に協力して対処すべきであり、中国やインドにも同調を求めるべき立場にある。

 もともとインドのロシアからの石油輸入は全体の0.2%で無視出来る程度だったが、ウクライナ戦争が始まると急増し、35%ないし40%となり、中国と並んで大口の輸入国となった。8月6日、トランプはインドに 25%の関税を課すことを表明した。

 この関税の発動は8月27日の予定である。インドとの貿易交渉はいまだまとまらず、8月7日には既に25%の関税が課されているので、このまま推移すれば、インドは合計で50%の関税となり、ブラジルと並んで最も高率の関税に直面することになる。


新着記事

»もっと見る