すでに商業化の一端も
甲子園で勝ち進む活躍がメディアで取り上げられると、寄付が一気に集まる可能性がある一方で、こうした“寄付頼み”では、学校側や生徒が負担する金額が大きく左右するリスクと隣り合わせになってしまう。
大会を主催する日本高校野球連盟は、登録選手20人、責任教師1人、監督1人の交通費や宿泊費に限って補助を行っている。ただし、それ以外の部員や応援団などの費用は全対象外だ。
これは、高野連がお金を出し渋っているわけではない。高野連はそもそもテレビ放映権料を受け取らず、観戦客の入場券も割安に設定し、金儲けに走っていない。甲子園を「スポーツビジネス」とはとらえていないのは、そもそも日本学生野球憲章が商業利用を禁止しているからだ。
ただ、甲子園出場を巡っては、私学が有望な選手を集めたり、普段から強豪校同士の練習試合などで多額の遠征費がかかったりと、大金が動いていることは事実だ。また、甲子園出場がもたらす学校経営への影響は大きく、生徒集めなどに利用されている面は否めない。一方で、私学を倒して全国大会へと勝ち上がってくる公立高校も存在している。
スポーツメディアも春夏の甲子園取材に注力し、自社媒体の売り上げ増を目論む。スポーツ用品メーカ―も甲子園の影響で野球を始める子どもたちによって売り上げが立つ。甲子園そのものの商業主義を否定する高野連も、こうした状況は認識しているはずだ。
そうであるならば、アメリカの大学スポーツ「NCAA」のように放映権料などの収益を学生らに分配するといった巨大なスポーツビジネスを展開する必要はなくても、出場チームや在校生、応援団が応援に駆けつける遠征費を補助できる仕組みは整備しても文句はでないだろう。
高校野球は球児だけのものではない
高校野球は近年、延長戦のタイブレーク制導入や来春からのDH(指名打者)制解禁など、変化をいとわなくなっている。不十分ながら猛暑対策にも力を入れる。
高校野球を支えているのは、プレーをしている球児だけではない。完全な商業主義に舵を切らなくても、「高校野球でお金がかかるのは球児だけではない」との前提に立って、まずはともに高校野球文化を支えている学校側の負担軽減策から着手を検討することはできるはずだ。
