2025年12月5日(金)

都市vs地方 

2025年8月29日

 このような場合、勤務地ではイノベーションが多めに、居住地では少なめに見えてしまうため、両者を合算して考える必要がある。それを加味しても、首都圏に日本のイノベーションの半分以上が集中していることになる。

 イノベーションを考えるうえで、働く人の分布も重要であるが、その人たちが働く場所である事業所の所在地も重要である。そこで、日本全体の事業所数や本社数に占める都道府県シェアも確認しておこう。

 図2は横軸に20年の就業者数の都道府県シェア(%)を、縦軸に21年の日本全体の事業所数もしくは本社数に占める都道府県のシェア(%)をとったものである。事業所数および本社数は総務省の経済センサスの数値である。

 青い点が事業所数に占める都道府県シェアを、黄色い点が本社数に占める都道府県シェアを表している。程度の差はあるものの、両者とも特許数と似た傾向を示している。

 就業者に比べて事業所や本社は東京都や大阪府に集中している。本社の方が事業所よりも東京都への集中が顕著であるものの、イノベーションほどには集中していない。

 図1と2より、働く人が集まる場所に、それ以上に事業所や本社は集中しているが、それよりもさらにイノベーションは集中しているのである。

イノベーションの特徴を理解した政策の必要性

 日本で首都圏に半分以上のイノベーションが集中している様子は、アメリカで一部の通勤圏に6割のイノベーションが集中している様子とよく似ている。こうした集中の様子は、イノベーションについての集積の経済と整合的で、日本での東京への集中が特におかしなものではないことを示唆している。

 ただし、近年のアメリカのシリコンバレーでのイノベーションの急増のような、新たなイノベーションの集中が見られるのかはここでの資料からは読み取れない。日本のイノベーションを活発にし、経済成長につなげていくためには、イノベーションが持つ特性をよく把握し、必ずしも各地域に均等に生じるものではないことを理解しておく必要がある。その上で、より細やかな分析を通じてどのような産業でイノベーションが活発なのか、それがどのように経済成長につながるのかについて明らかにし、それを踏まえた政策を実行していくことが望まれる。

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