「半導体の復活なくして日本の未来はない」と主張する小柴満信・経済同友会経済安全保障委員会委員長、JSR(旧日本合成ゴム)前会長。著書『2040年半導体の未来』(東洋経済新報社)の中では、遅れを取り戻す「千載一遇のチャンスが到来している」と述べる。半導体業界に何が起ころうとしているのか聞いた。
世界の政治・経済のパラダイムシフトが起きようとしている。ヘッジファンドの経営者で『世界秩序の変化に対処するための原則』(日本経済新聞社)で知られるレイ・ダリオは、国家の覇権はテクノロジーで決まると言った。18世紀のオランダは造船技術、19世紀の英国はエネルギー革命、20世紀の米国は軍事力だ。
一方、社会秩序はその誕生が平和をもたらすが、バブルの発生と崩壊、景気後退、対立(戦争)を経て、新しい秩序が生まれる。この周期が80年程度続くと規定している。
同じく『100年予測』(早川書房)で知られる未来学者のジョージ・フリードマンは、50年と80年の周期で変化する循環があると指摘する。50年周期は「社会経済的サイクル」と呼び、ダリオ同様、テクノロジーが先導して変化する。
フリードマンは、米国の社会と経済には一定のリズムがあり、およそ50年ごとに大きな不安と痛みを伴う危機を経験すると指摘する。米国では、初代大統領の名を冠し「ワシントン・サイクル」(1783~1828年)に始まり、これまで5つのサイクルを経験してきた。
中でも、第4の「ルーズベルト・サイクル」(1932~80年)では、自動車というテクノロジーが先導したが、終盤になるとベトナム戦争や石油ショック後のスタグフレーションが起きた。第5の「レーガン・サイクル」(80年~2030年頃まで)は半導体とそれに支えられたインターネットやAIなどが先導してきたが、社会的混乱や制度疲労など、米国衰退論が頭をもたげつつある。
