2025年12月6日(土)

Wedge REPORT

2025年8月6日

米中の動きと
日本に必要なこととは?

4月21日、米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアンCEOの表敬を受けた石破茂首相(REUTERS/AFLO)

 トランプ関税が発動された。米国の半導体市場は、供給よりも需要が多いため、関税という高い障壁で囲まれた場合に何が起きるか興味深い。一方で、半導体製造設備に余裕のあるインテルのキャパシティーを、誰が、どう使うのか、という関心も高まってくるのではないか。もしかすると、経営難のインテルに追い風が吹くかもしれない。

 米国は中国に対して先端技術の輸出規制をしているが、ループホール(抜け道)は必ずできるものだ。エヌビディアがシンガポールに半導体を輸出しているのが、中国へのループホールになっているのではないかと気になっている。

 しかし、輸出規制の効果も出ているはずだ。例えば、中国の量子コンピューター技術は日米と比べて2世代くらい遅れているのではないかと考えている。

 日本にとっても両国の動きを注視しておくことが大切だ。半導体は経済安全保障推進法において、国⺠の⽣存や、国⺠⽣活・経済活動に甚⼤な影響のある「特定重要物資」に指定された。台湾有事が起きた場合、日本に与える影響は極めて大きい。今後も中国は、武力侵攻の可能性をちらつかせながら、物理的・心理的に台湾を威圧するというシナリオは十分に考えられる。

 半導体は重要な社会基盤であり続けるが、あくまでも「道具」に過ぎない。先端半導体が量産できたからといって日本経済が自動的に成長するわけではない。重要なのはAIや次世代のコンピューター技術を使って新たな産業を生み出すことだ。その要素技術としての半導体は、どんなことがあっても自給できる体制をつくらなければならない。

 米国の場合、いわゆるGAFAMとテスラ、エヌビディアの7社がけん引しており、AIをビジネスモデルに使い、それによって売上を毎年20%~40%も増やしている。残念ながら、日本企業はビジネスモデルにAIを組み込むことができていない。こうした中で日本に必要となるのは「ビッグピクチャー」だ。つまり、「どのような国家、社会をつくりたいか。そのためにはどのような技術が必要か」ということだ。

 例えば、米国には大統領科学技術諮問会議(PCAST)という大統領の諮問機関がある。大統領が任命するメンバーで構成され、サイエンス、テクノロジー、教育、イノベーションなどについて大統領に助言する。現状、日本には、PCASTに相当する機能がない。このような「技術インテリジェンス」を、日本にも設けるべきだ。

 また、東京一極集中によるデメリットの議論は別として、狭い国土でこれだけの国内総生産(GDP)規模を誇り、経済密度が高い国は日本の他にない。この国土を生かし、日本版PCASTが主導し、先端半導体を活用した様々な技術などを実証実験(テストベッド)し、社会実装していくことも必要だろう。大転換の時代に向け、日本はいまある技術を〝総動員〟していく時だ(談)。

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Wedge 2025年6月号より
日本のコンテンツが世界へ羽ばたく時
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