Economist誌8月16日号が、「サラ・ドゥテルテの復活はフィリピンにとって何を意味するのか」と題する解説記事を掲載している。概要以下の通り。
ここ数カ月、サラ・ドゥテルテ副大統領は公金不正使用とマルコス大統領暗殺企図の疑いでフィリピン議会の弾劾手続きに直面し、また父親のドゥテルテ前大統領は人道に対する罪の疑いでハーグに移送され、ドゥテルテ王朝は終焉の様相を呈していた。
しかしながら一族は今上昇機運にあるようだ。最高裁は7月末に下院の弾劾手続きを違憲と判断し、(弾劾を決議する権限のある)上院は判断を先送りした。これによってサラは2028年の大統領選挙のトップランナーに躍り出ることになったが、同時に選挙までの3年間マルコス家との泥試合が続くことを意味し、国家にとってはより大きなダメージとなりかねない。
有力な一族が議会の80%を支配するフィリピン政界にあってサラ・ドゥテルテは典型的な例である。サラは8期ダバオ市長を務めた父親の副市長に07年に初めて就任し、22年の選挙では一族の名声を背景に副大統領に当選している。その間不安定ながらもマルコス大統領とパートナーも組んだ。
大物に支配されるフィリピンの政治文化ではしばしば著名人が選挙に勝つし、政治家はソーシャルメディアでも実生活でも民衆にアピールする。先日の選挙運動でも、「BHH(彼(ドゥテルテ前大統領)を帰国させよ)」と書かれたTシャツを着たサラの支持者の選挙運動はあたかもロックコンサートのようであった。
サラの主張は一見父親と同様である。サラはマルコス大統領の米国寄りの姿勢を批判しいずれの外国勢力にも肩入れすべきではないと主張している。ただしサラがどの程度中国との関係を再構築しようとしているのか定かではない。
今や比米関係はドゥテルテ大統領が就任した16年より遥かに強力である。マルコス大統領は米国との貿易取引を成立させ、当初より1%低いだけの19%の関税率で決着した。だが大統領はこれを勝利としている。
