2025年12月5日(金)

#財政危機と闘います

2025年9月3日

 このようにインフレは貨幣の実質価値を引き下げるが、同じことは名目額が固定されている債権にも当てはまる。国債は政府が発行する借用証書であるが、国債の保有者から見れば債権である。インフレで名目額が固定されている債権の価値が減じるということは、われわれ債権者の資産が目減りしたということだが、債務者である政府からみれば、借金の価値が実質的に軽くなったということに他ならない。

国民に意識させることなく課せる「税」

 インフレに伴うこうした国民の負担増はインフレ税と呼ばれる。しかも、インフレ税による国民の負担増、資産の目減りは気が付かれ難く、財政当局から見れば甚だ好都合だ。

 要するに、インフレとは、貨幣や金融資産の価値を棄損し、貨幣の持つ実質的な購買力を低下させる。インフレにより、その他の条件が同じであれば、私たちは貧しくなるということだ。

 インフレ税は目に見えない税であるがゆえに、われわれ国民には認識しにくく、であるからこそ、政府から見れば私たち国民に意識させることなく「税」を課すことができる。ある意味、とても便利な「税」であり、財政当局から見れば、とても使い勝手の良い「税」である。

 実際、徴税システムがしっかり整っていない開発途上国などでは、インフレ税収は政府の貴重な財源確保の手段として活用されている。ただし、過度にインフレ税収に依存してしまってインフレの制御に失敗し、ハイパーインフレが発生、国民生活が危機的状況に陥った国が歴史上存在していることは頭の片隅にとどめておいた方がよいだろう。

 このように、インフレ税は、われわれ国民からは増税されていると気が付きにくいこともあり、財政当局が意図的にインフレによる財政健全化に舵を切った可能性が高い。その証拠に、給付金のバラマキは行っても、バブル期までのインフレ局面には実施されていた物価調整減税についてはゼロ回答だ。

 インフレ税は、所得税や消費税のように、国会で法律によって決められたわけではない。ある特定の決まった税率がある訳でもない。目に見えない税負担である。

 日本国憲法が規定する財政民主主義に反するのは明白であるし、租税法律主義や、予算原則にも抵触する。インフレ税は超法規的な税なのだ。


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