実は、クレムリンは以前から諸外国がこの種の保証をウクライナに与えることを排除しないと言ってきた。しかしそこには落し穴があって、ロシアも保証国になること、そして西側の部隊はウクライナに駐留してはならない、という条件が付いていた。
22年にロシアとウクライナが協議していた講和条約の草案は、ウクライナがNATOのような軍事同盟に加盟することを禁じ、外国軍のウクライナ駐留は容認しないとする一方、ウクライナが再び攻撃された場合は、英中米仏にロシアも加わった「保証国」グループがウクライナ防衛に当たると規定していた。
ロシアはさらに、将来ウクライナが攻撃された場合、ロシアを含む全保証国が軍事介入に同意することを要件とする条項を加えることも望んでいた。これは、事実上、ロシアがウクライナを再侵略し、その後はロシアがウククライナに代わって他国の軍事介入に拒否権を発動することを許すものだ。
一部の専門家は、戦闘終了後、西側がロシアの承認抜きにウクライナに部隊を配備することは可能と主張、他方、別の専門家は、ウクライナにおけるNATO軍の存在にプーチンが強硬に反対していることを考えると、西側部隊が駐留する可能性が検討されている限り、ロシアはそもそも和平合意に同意しないだろうと言っている。
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意味をなさなかった米露首脳会談
この解説記事はアンカレッジ会談でのウクライナの安全の保証に関わる話し合いについての理解が米露間で全く違っていることを指摘している。
トランプはロシアがウクライナの安全の保証を容認したことを米露首脳会談の成果としてゼレンスキーにも欧州の首脳にも、またメディアにも説明してきたが、ロシア側はトランプの説明は何の根拠もないと真正面から否定している。トランプや欧州諸国首脳がウクライナの安全の保証と言うときはロシアが再度侵略しないというロシアからの安全の保証を念頭に置いていることは明らかであるが、この保証にはロシアの関与が不可欠というのでは、全く話にならない。
