発祥の地は北海道
まず木育という言葉は、いつ、どこで誕生したのか。
実ははっきりしている。誕生したのは2004年の北海道。提唱したのは北海道庁で、林業関係部署が道産材をもっと使ってもらうため子供の頃から木に親しんでもらいたいと考えたことから始まった。木育と名付けたのも「食育という言葉があるなら、木育があってもいいじゃないか」というノリだったという。
つまり子供たちに木のことを学び、木を好きになってもらうことが目的だった。身の回りから木製品が減っていく現状にストップを掛けたい気持ちだったのだろう。
そこで森林や林業、教育関係の識者を集めて審議会をつくり、定義づけを行ったところ、単に木に親しむため、木のオモチャで遊ぶだけでなく、森林や自然環境全般の教育の意味まで広げた概念にすべきと提唱された。そして「人と、木や森とのかかわりを主体的に考えられる豊かな心を育むこと」が目標とされた。これは翌05年に「木育プロジェクト報告書」としてまとめられ公表されている。
具体的には子供が木のオモチャで遊ぶ催しから、大人も含めて森林環境について学ぶ勉強会まで含む。知識を身につけるだけでなく、森や木を実際に体感することで、情操面から森や木に馴染んでもらうことを重視している。
全国的に広がる様々な展開
この木育の運動は、多くの人々の共感を呼んだ。最初は森林や林業、木材関係者が取り組んだが、徐々に教育・保育関係者も推進するようになる。全国各地で多くの木育と呼ばれるイベントやセミナーが開催されるようになった。
さらに木育を普及させるイベントの企画やコーディネートのできる専門家の養成も始まった。北海道では「木育マイスター」という資格を設けたほか、全国的には民間団体による「木育インストラクター」も登場するようになった。
こうした動きに国も飛びついた。06年には林野庁の「森林・林業計画」でも木育を推進するようになった。林野庁も木材の良さを子供たちに知ってもらうことから林業振興を考えたのである。そんな後押しもあって、全国で急速に木育が広まっていく。
林野庁では、05年から「木づかい運動」を展開していた。こちらは気遣いに引っかけて木使い、つまり木材をもっと使おうという運動だ。気候変動対策として「国産材を使って二酸化炭素(CO2)を減らそう」という目的を掲げているが、実のところ林業振興が目的だろう。
