2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年9月16日

 木育や木づかい運動の根幹には、林業振興が目的としてあった。しかし全国に広がる過程で、林業どころか現実の森林や木材からも離れ、理念先行に走る傾向にあるようだ。

森と木と人をつなぐ取り組みを

 日本の木材自給率は、戦後下がり続けており、木育が登場した04年時では、18.4%と最低ラインだった。だから国産材・道産材を使ってくれという思いは強かったのだろう。ある意味、林業振興の意図を「子供の情操教育」や「地球環境問題」「木の文化の再興」といった言葉で包み隠してスタートしたと言えなくもない。

木の野菜などが並ぶキッチン(花巻おもちゃ美術館)

 現在の木材自給率は、40%を超えている。20年ほどで倍増したのだから、大きな成果と言えるだろうが、その数値は木育が生み出したものと言い難い。

 木材自給率が高まった大きな理由は、木質バイオマス発電が広がって、森の木を燃料にするようになったからだろう。ほかに合板を外材ではなく国産材で作るようになったこともある。

 いずれも木の価格は安く、価値を上げたとは言えず、林業振興になったのか怪しい。それどころか無茶な伐採で森林破壊が広がったようなケースもある。

 はたして子供たちは、木育を通じて木を好きになったのか。森に興味を持ったのか。木のオモチャで遊んでも、それが樹木からつくられたものと伝わっているだろうか。

 単に木のオモチャで遊んだら木が好きになる、森林の生態系を学んだら森を大切にする、というものでもあるまい。木育を形骸化せず、本当の意味で森と木と人のつなぐ存在であってほしい。

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