2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年9月16日

 ここから「ウッド・チェンジ」という言葉も登場した。身の回りで金属やプラスチックなどで作られている物を木質に換えて木の利用を増やそうというわけだ。また自治体の中には幼児の誕生日に「地元の木のオモチャ」をプレゼントする「ウッドスタート宣言」運動も始まった。さらに「ウッド・レガシー」という呼び名で「木の総合文化」を推進する国会議員や財界の運動まで誕生している。

 どうやら言葉遊びが好きな“業界”のようである。

新たなビジネスチャンスにも

 全国に広がるにつれて木育の内容も拡散してきた。木製品も木のオモチャだけでなく、木の家具や木造住宅も推進された。さらに山に木を植えたり伐ったりする林業体験なども木育の一つとされるようになった。

 木育関連のセミナーもよく開かれるが、その項目を追うと、「木の文化の伝統」や「介護予防のための木育」「ビジネスとしての木育」「林業現場からの報告」「コミュニケーションと地域づくり」など、大人向きのテーマも多く取り上げている。なかには木が登場しないものもあって、参加者もビジネスマンや高齢者が多いように見受けられる。

 一方で全国に「おもちゃ美術館」「木育広場」といった名の施設が増えてきた。木のオモチャにこだわって収集し、子供たちを遊ばせる施設である。それらは東京おもちゃ美術館(特定非営利活動法人芸術と遊び創造協会)が経営および指導して展開しているものが多くて、積極的に全国展開を図っている。

花巻おもちゃ美術館

 また木育インストラクターという資格を設けて養成講座も開くのもこの団体で、新たなビジネスチャンスとなっている。ただ「おもちゃ美術館」には自治体が積極的に関わっているものも多く、子供が集まる拠点を地域づくりにつなげたいという行政の思惑もあるようだ。

その効果は?

 少し原点にもどるが、子供が木のオモチャで遊んだり身の回りにある木に触れると、どのような効果が生まれるのだろうか。

 研究によると、視野に木の素材が入る割合によってリラックスしたり、集中力が増す効果が見られたという。また木の香りがストレスホルモンを減少させるとか、木肌に触れると脳内にα波が発生するといった実験結果も出ていた。

 そのほか床が木製だと、関節への負担を軽くして怪我を減らすという報告もある。ただ研究報告に目を通していると、最初から木は心身によいという前提があるように感じる。

 それに主催者は、必ずしも森や木が好きだから木育を行うわけでもなさそうだ。木育指導者の中には、現実の森を入ったことがなく、ましてや林業には全然興味を持っていないという人が結構いる。「虫が苦手なので森はちょっと……」という声さえある。木育を受けた子供たちも、木や森が好きになるとも限らないようだ。


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