公開初日の映画『731』に注目
18日に式典が行われた瀋陽市に住む筆者の中国人の知人は「毎年行われている恒例の式典ではありますが、今年はとくに抗日映画の影響なのか、SNSでは『歴史を心に刻め』といった言葉をよく見かけるように思います。2カ月近く前から続く抗日映画の影響が、日本とまったく縁のない人々の間に、じわじわと効いているのかもしれません。映像の力は大きいですね。
でも、日本に一度でも何度も行ったことがあるという私の友人たちは、そんなことは一切関係なく、普段通りに過ごしています。この日はとにかく静かにして、SNSにも余計なことは書かず、無事に過ぎ去れば、という感じです」と正直な気持ちを吐露してくれた。
抗日映画については、筆者の以前の記事でも紹介したが、7月に公開された『南京照相館』(南京写真館)が9月初旬の時点で、約29億元(約600億円)という大ヒットを記録した。その後、8月に公開された映画『東極島』は地味めな映画で、あまり注目されなかったが、もともと7月31日に公開予定だった映画『731』は『南京照相館』と同様、公開前から評判が高かった。
中国政府がなぜ、この映画の公開を9月18日に延期したのかは不明だが、ナショナリズムを煽るには十分な効果があったといえるかもしれない。「731」は日付の意味ではなく、旧日本軍で細菌兵器を製造した731部隊(関東軍防疫給水部)から名付けた映画だ。上記の瀋陽市の式典同様、「918」という数字から、公開初日の1回目の上映は、多くの映画館で午前9時18分にスタートするという“こだわり”ようだった。それもSNSのネタになり、午前の1回目の上映時間をめがけて映画館に足を運んだ人が多く、チケットは初日だけで約2億5000万元(約50億円)以上が売れた。
中国メディアの報道によると、公開初日の興行収入としては歴代1位を記録。そうしたこともあって、18日夕方から夜にかけてSNSをチェックしてみると、「918」よりも「731」に関する話題のほうが注目を集めており、関連の検索ワードとして「731映画評」「731感想」といったワードがあった。
コメントなどを投稿している人の多くは、同映画のポスターや写真、一部公開されているショート動画などをはりつけており、「歴史を心に刻め」「国の恥を忘れるな」といった言葉もあった。筆者もショート動画の一部を見てみたが、それを見た限りでは『南京照相館』よりも残虐で、思わず目を覆いたくなるようなシーンの連続だった。
