2025年12月5日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年9月19日

 映画を見た人の中には「これは絶対に子どもに見せてはいけない」と書いている人がいたが、一方で「これはすべての中国人が見るべき価値のある映画だ」というものも少なくなかった。

中国在住日本人の行動も制約

 このように、対日感情が悪化するような社会の雰囲気から懸念されるのは、昨年9月18日に深圳市の日本人学校に登校中だった日本人男子児童が中国人の男に刺殺されたような事件の再発だ。同事件の犯人はすでに故意殺人罪で死刑判決を受け、刑が執行されたが、裁判では、日本人を狙ったものなのかどうか、動機が解明されなかった。

 昨年6月にも蘇州市の日本人学校のスクールバスのバス停にいた日本人母子が中国人に襲われる事件が起きており、中国にある日本人社会の間で不安が広がっている。深圳日本人学校では、18日と19日は休校に、上海市や広州市の日本人学校は18日をオンライン授業に切り替えるなどの対策を取り、周辺の警備も強化したが、今月12日には、同じく蘇州市で深夜2時ごろ、日本人と中国人が酒に酔ってトラブルを起こした事件が起きたばかりだ。

 幸い、同事件ではケガ人などはいなかったが、トラブルの原因は公開されておらず、「日本人」であることがトラブルと関係していたのかどうかはわからない。中国では、7月7日の盧溝橋事件の日、9月3日の抗日戦争勝利記念日、12月13日の南京事件の日など、中国在住日本人が「最も気をつける日」がいくつかある。今年はとくに、そうした特定の日以外にも、飲酒を伴う場面や、大勢の人が集まる場所、日本人とはっきりわかるような場所などでは、十分に注意する必要があるだろう。

社会への恨みが日本人へ

 むろん、筆者の友人のように、日本に来たことがあり、日本と関連が深い中国人は、中国政府がナショナリズムを煽っていることに対して憂慮しているが、まだ多くの中国人は日本についてSNSなどだけでしか情報を得ることができない。特に現在、中国では経済が悪化しており、若者の失業率が高いだけでなく、中高年の失業者も増加している。昨年起きたいくつかの事件は、借金を抱えていたり、社会で孤独を感じたりしているなど、追い詰められた人の犯行だった。

 今後もそのような、社会に恨みを持つ人々が増えていくことが懸念される。映画『731』の公開初日の大ヒットは、在中日本人だけでなく、日本に住む日本人の不安も増大させるものになりそうだ。

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