2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年9月26日

 2025年8月29日付フィナンシャル・タイムズ紙社説が、トランプのインド疎外の利益を得るのは中国だ、米国の不可測性は中印接近のリスクをはらむと警告している。

(dvids・ロイター/アフロ・Anadolu/gettyimages)

 米国がインドからの輸入品に対し懲罰的50%関税を課してから数日後、インドのモディ首相は、7年ぶりに中国を訪問する。最近のトランプの言動が、インド太平洋での中国支配に対抗する防波堤とするために歴代米政権がインドとの関係構築を目指してきた努力に大きな打撃を与えていることは明らかだ。

 トランプは、インドを「死んだ経済」と切り捨て、インドの対米貿易黒字と国内市場の保護主義を理由に既に25%の「相互関税」を課している。だが、8月27日にトランプは、ロシア産原油購入への「対抗措置」として、さらに25%の関税を上乗せした。これが、米国の偽善性と気まぐれさへの批判を一層強めることになった。

 米国は、最近までロシア原油購入に異議を唱えていなかった。しかも、それをもっと買っている中国には、同様の措置は取っていないのだ。

 インドは既に、宿敵であるパキスタンとの関係をトランプが深めていることに不満を募らせていた。5月にインドとパキスタンの停戦を自ら仲介したと主張して以来、トランプは係争地カシミールについてパキスタンの一部言葉遣いをなぞっている。6月には、パキスタンの実力者ムニール陸軍参謀長と2時間にわたって非公開の昼食をした。

 幾ら気まぐれな大統領といっても、これは顕著な方針転換だ。トランプは、かつてモディを「真の友」と呼び、2020年にはグジャラート州で10万人を超える聴衆に向かい、「米国はインドを愛し、インドを尊重し、常にインド国民の忠実で誠実な友人であり続ける」と述べていた。

 かかる豹変は、「より信頼できる国際的な相手国」は中国だと主張する中国を助けるだけだ。米国の予測不可能性は、インドのような主要国に対して中露との関係に距離を置くよう説得する上で何の役にも立たない。


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