モディは9月2日に習近平やプーチンと共に上海協力機構(SCO)天津首脳会議に出席する。今回のモディの出席は、20年のヒマラヤでの国境衝突で冷え込んでいた中印の関係改善を象徴する。8月王毅外相はインドを訪問し、両国は、近く直行便を再開し、国境の交易拠点を開き、査証発給を容易にすることに合意した。
もっとも、この中印の和解を過大評価すべきではない。インドは依然として中印国境の安全保障に強い懸念を抱いている。
中国は、パキスタンへの資金や軍備の重要な供給国だ。「龍と象」と形容される中印両国がパートナーとなる可能性は高くない。
今後の焦点は日米豪印の4カ国対話「Quad(クアッド)」である。クアッドは、中国の影響力に対抗する枠組として、トランプを含む歴代米大統領が推進してきたものだ。
インドが今年主催国だが、開催時期など不透明だ。友好国を疎外することにより、米国は中国の思うつぼになっている。
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無神経な発信を続けるトランプ
この社説は、インドに対するトランプ外交の稚拙さを批判する。トランプは、対印外交立て直しの措置をとるべきだろう。
行動をとる一義的責任は米国にある。同時に日豪両国はインドとの連携を努めて強め、トランプの間違いを埋めていくべきだ。
その意味で、8月29日のモディ首相の訪日と石破茂首相との会談は非常に重要だった。サプライチェーン強化など具体的な合意は、日印の「信頼しうる関係」の証になった。このことは、9月5日に東京で開催された日豪「2+2」でも当然議論になったであろう。
一方、トランプは無神経な発信を続けている。9月1日、インドとの関税交渉につき、「彼らは今になって関税をゼロに削減すると提案してきた」、「遅すぎる」と批判した。9月5日には、「インドとロシアは暗黒の中国に行ったようだ」と投稿した。しかし、6日には、「我々は引続きインドの友人だ」と投稿している。
この社説の掲載(8月29日)の後、モディは訪日を終え、中国の天津に向かい、8月31日~9月1日にSCO首脳会議に出席した。そこで最も注目されたのは、習近平、モディ、プーチンの3人が気を許して談笑する写真だった。
