2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月3日

 ハマスは、攻撃で幹部は死ななかったが、最高幹部のハリル・アル・ハイヤの息子と警護官3人とカタールの警備担当官が死亡したと言っている。イスラエル空軍はこれまでガザでハマス幹部を、またレバノンやイランでヒズボラを驚くべき正確さで殺害してきたが、今回は同軍としては珍しく失敗した。

 イスラエル軍の参謀総長が8月31日に「生き残ったハマス幹部の大半は外国にいるが、彼らも逃がさない」と警告したことから、カタールは攻撃を恐れ、イスラエルの諜報機関と米大統領府にカタール領土内でそうした攻撃はないとの保証を求め、それを約束されていた。火曜日の攻撃は「全くの驚き」だったとカタール高官は語っている。

 ネタニヤフとトランプ両者ともハマスに降伏を要求しているが、カタールの仲介ルートが粉砕され、恐らくエジプトの仲介ルートも遮断された今、交渉でどうそれを達成するのか。イスラエルは紛争終結のための外交的選択肢を駄目にし、道を狭めてしまった。

 ネタニヤフはガザでの完全勝利というビジョンに向かって突き進んでいるが、火曜日の攻撃によって、彼は紛争の交渉による解決の道を完全に破壊するという危険を冒してしまった。

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ガザ紛争の外交的解決を閉ざす愚挙

 このイグネイシャスの論説は的を射た良い論説である。

 今回のイスラエルによるカタール領土内にいるハマス幹部への攻撃は、カタールへの国連憲章に違反する武力行使であり、許されるものではない。が、それ以上に、イスラエルがガザ戦争を終結させるために、停戦その他を探っていく上で不可欠な仲介国に対する攻撃であったことには、大きな意味がある。

 ガザ紛争の外交的解決の道を閉ざしてしまった愚挙と言える。こういう仕打ちを受けたカタールが、誠実な仲介者として今後復帰してくる可能性はほぼないと思われる。


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