英国は5月にトランプ大統領との初の貿易協定を締結したことを誇ることができる。基本関税は10%でEUの15%より低く、自動車には低関税割当が適用され、英国産鉄鋼の対米輸出関税25%をゼロにする約束も取り付けた。
トランプ流の取引主義の観点では、英国は最強の切り札である招待状を既に切り、見返りとして得た純利益はほとんどない。業界が決着を期待していた鉄鋼関税の緩和は実現せず、米国企業による1500億ポンドの投資約束は、既に計画されていたものが含まれている。データセンターやAIインフラへの数十億ドルの投資約束は微々たるものだ
スターマーは、他の欧州の指導者たちとともに、ウクライナ問題に関してトランプがプーチンに完全に屈服することを阻止してきた。しかし、共同の働きかけにより、米国大統領にクレムリンへ真の圧力をかけるよう説得することは失敗に終わった。
現在、トランプは、ワシントンが制裁を検討する前に、欧州がさらに多くの制裁措置をモスクワに課すことを要求している。トランプがガザ地区におけるイスラエルの壊滅的な攻撃を抑制しようとする意図も見られなかった。
トランプが激怒することなく、両国の指導者がこのような意見の相違を公の場で表明できたことは、2人が予想外の信頼関係を築いていることを示唆している。外交において、こうした関係は重要だ。
しかし、英国が「特別な関係」と呼び続けるこの枠組みにおいて、英国は対等ではなく、ますます従属的な立場にあるという印象を強く残した。王室の威厳ある式典にもかかわらず、世界中の多くの人々が抱くのはそうしたイメージである。
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派手さに比べなかった成果
今般のトランプの訪英は、英国の歴史において前例のない2度目の国賓招待であり、英国側の種々の手厚い歓迎行事やもてなしは破格の扱いであった。スターマー政権にはこれと引き換えに一定の外交上の目的を実現する意図があったことは、容易に想像できる。
トランプとの間での首脳間の個人的な信頼関係の確立に加え、具体的には、トランプ関税の緩和、特に鉄鋼関税の免除やスコッチウイスキーの関税引き下げ、経済面でのパートナーとしての関係強化、外交面では、トランプがウクライナ戦争とガザの人道危機についてそれぞれロシアとイスラエルにより強い対応を求めることである。
