ニューヨーク・タイムズ紙は、7月18日付けで、英国とドイツとが防衛を含む幅広い分野での協力協定に署名したことを報ずると共に、英独両国がフランスとともに三カ国で米国の欧州からの撤退に備えようとしている旨の解説記事を掲載している。概要は次の通り。
英仏独の三カ国は、長期にわたる軋轢を超克し、米国に懸念の眼を向けつつ、新たに防衛面でのパートナーシップを築こうとしている。7月17日、英国のスターマー首相とドイツのメルツ首相は、相互防衛、経済面での協力その他の分野のパートナーシップという広い分野にわたる条約に署名した。その前の週には、英国のスターマー首相とフランスのマクロン大統領は、お互いの核戦力で協調することに合意した。
三人は、米国のウクライナへの支援が低減する中、ウクライナのロシアとの戦いを支援しようとする「有志連合」の指導者でもある。これら三カ国は今や「三角同盟」とも呼ばれるが、従来から北大西洋条約機構(NATO)と主要7カ国(G7)を通じてのパートナーであり、これらのフォーラムには米国も参加している。三カ国の関係者は、三カ国で構築しつつある制度は、このフォーラムを補足するためのものであり、取って代わるためのものではない、と指摘する。
NATOは32カ国からなる、延べ広がった防衛の官僚機構であり、加盟国間で意見がまとまらないことがある。英独仏の関係者は、欧州と米国との関係が変化していることに対応できるような、より小規模で、より敏捷に動けるグループを求めていた。
こうした努力は、ロシアがますます攻撃的となる中、いざという時に米国から独立して、計画を立案し、討議を行い、行動を取るための仕組み作りであると捉えられている。仕組みが実際に発動されることはないかもしれない。一方、トランプ大統領が欧州に対する米国のコミットメントから距離を取ろうとし続けるならば、そうしたオプションを持っている必要があるだろう。
7月17日の記者会見の場で、スターマー首相は、ドイツとの「ケンジントン条約」は、両国間での例のない二国間条約であると述べた。メルツ首相は「欧州の安全保障の仕組みと米欧間の結びつきは、かつてない規模の変容の最中にある。こうした状況の中、われわれの目的は、両国国民の自由、安全、繁栄を守ることである」と述べた。
スターマー首相がこのように独仏と取極を結ぶのは、ある部分、英国の欧州連合(EU)離脱によって失われた外交上および経済上の結びつきを再構築するためである。
メルツ首相は、2月に就任して以来、ドイツがグローバルな舞台でリーダーシップを取ることができるように外交に重点を置いてきた。資金借り入れを行う権限を得て、メルツは、近い将来、ドイツの国防費および関連するインフラに国内総生産(GDP)の5%を投じようとしている。第二次世界大戦で英国、フランス、米国と戦い、その後、軍隊を小規模に抑えてきたドイツにとって、軍備増強の決定は、驚くべきことである。
