英独仏の三カ国が三角同盟の構築に力を入れている背景には、上記の解説記事でも指摘されているように、「ロシア」と「米国」の要素がある。今回の英独条約の前文では、ロシアについては、「ロシア連邦による欧州大陸への残忍な侵略は、欧州の安全保障にとって最も顕著で直接的な脅威」との認識を示している。
一方、米国については、当然のことながら国名を挙げた記述はないが、同じく前文で「地政学的環境が根本的に変化する中、・・・開かれた民主主義的な社会のために力を結集する」、「ルールに基づく国際秩序への挑戦」など、米国の変化の文脈とも取れる文言が用いられている。
NATOとEUの限界
この英独仏の三角同盟の意義を考えようとするとき、欧州にとって重要なNATOとEUの持つ意味を念頭に置く必要がある。今回の英独条約にも、NATOとEUが頻繁に言及されている(例えば、EU離脱した英国とEUとの協力を増進していくとの方向性)。
一方、解説記事が「より小規模で、より敏捷に動けるグループ」の必要性に言及しているように、NATOとEUの限界への認識がこれら三カ国を三角同盟に駆り立てていると言えるであろう。
現状を言えば、「欧州における米国の存在が低減する時」ではあるものの、「欧州から米国がいなくなってしまう時」まで至っているわけではない。英独仏のいずれもが、米国が欧州に留まってくれるように望んでいるであろう。
一方、トランプ政権の動向を見るに、事態が悪い方向に進んでいく可能性も考えておかなければならないと認識されているのであろう。この英独条約、英独仏の三角同盟の構築には、そうした状況に備えて、できる措置をとっておかなければならないとの意向が見て取れる。

