2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月8日

 米国にとり、自国はGCC諸国からの原油は必要でないとしても、90%以上を依存する日本を初めとして同盟国、特にアジアの同盟国は、この地域に原油を依存しており、同盟国の経済安全保障の見地から米国がこの地域の安全保障にコミットし続けることは重要だが、同盟国を米国の貿易赤字の原因だと敵視するトランプ政権の琴線には響かないのであろう。

 しかし、米国が安全保障面のコミットメントを減らすことでペルシャ湾岸地域が不安定化したり、中国、ロシアの影響力が強まったりすることは、この地域に原油輸入のほとんどを依存する日本にとって迷惑な話だ。さらに、米国の対イラン封じ込め政策でもGCC諸国はその最前線であり、彼等の協力なしに対イラン経済制裁は機能しない。

米国依存への疑問の先には

 なお、アブラハム合意(2020年)にカタールが参加しなかったのは、当時、カタールはサウジアラビア、UAE、バーレーンによりカタール・ボイコット(2017年~21年、国境封鎖等)を受けており、米軍基地を公式に唯一認めている親米国家のカタールであっても、とても参加はできなかったのだろう。カタール・ボイコット中にサウジアラビア等は、カタールへの地上侵攻作戦を計画していたが、カタールにある米軍基地の存在が、それを思い止まらせたと言われている。

 このようにカタール・ボイコットでは米国の安全保障の傘は機能したが、今回の出来事は、カタールといえども米国に安全保障を依存していて良いのかという疑問を提起しただろう。他方、第1次トランプ政権時の19年、イエメンのフーシー派が犯行声明を出しているが、実際にはイランがサウジアラビアの油田を攻撃したが、その際、トランプ政権はイランに対して何の行動も起こさず、サウジ側を大きく失望させ、中国、ロシアとの関係強化に踏み切らせている。

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