2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月9日

 ウォールストリート・ジャーナル紙の9月9日付け解説記事が、北朝鮮の核開発が進展する中で、朝鮮半島を含むアジア地域における米国との役割分担にはジレンマが伴い、韓国は行き詰った状態にある中で、解決策は独自の核能力を獲得することだと考える韓国人が増えている、としている。要旨は次の通り。

(Viktor Cvetkovic/gettyimages・ロイター/アフロ・dvids)

 韓国は岐路に立たされているが、どの方向を見ても行き止まりに陥っているようだ。世界が数十年にわたる北朝鮮の非核化という夢から目覚めた矢先、韓国の長年の防衛パートナーである米国は信頼できなくなっている。

 金正恩委員長は、核兵器生産を増強している。かつては孤立していた同氏だが、最近はプーチン、習近平両氏と緊密な協力関係を築いている。

 金委員長は、南北間の緊張を統一によって解決するという考えを固く否定している。北朝鮮が韓国を「第一の敵であり、変わることのない主敵」と宣言する一方で、韓国の若者は、統一によって経済的繁栄が損なわれることを懸念し、統一に反対している。

 8月のトランプ・李在明会談の後、トランプ大統領は報道陣に対し金正恩氏との首脳会談への意欲を改めて表明した。ブルッキングス研究所の最近の世論調査によると、韓国人の35%が米国を信頼できない同盟国だと考えている。

 また韓国が朝鮮半島を、米国がアジア地域を守るという役割分担には固有のジレンマが伴う。中国の侵略に対する米国のいかなる対応も、より広範な紛争を引き起こし、北朝鮮がソウルを威嚇あるいは攻撃する事態を招く可能性がある。同様に、中国の台湾侵略が米国に邪魔されることなく行われれば、北朝鮮は米国の安全保障上のコミットメントが空虚なものと見て、攻撃を仕掛ける可能性がある。

 解決策はソウルが独自の核能力を獲得することだ、と考える韓国人が増えている。1991年のソ連崩壊後、ブッシュ大統領はすべての海洋および地上配備の戦術核兵器を撤去した。韓国の核兵器100発も撤去され、それ以来、統一と非核化による朝鮮半島の平和という夢は消え去った。世論調査によると、韓国人の60%が、北朝鮮の攻撃からソウルを守るために米国が核兵器を使用するとは考えていない。

 専門家によると、韓国は40発の核爆弾を製造できる原料を保有しているが、核不拡散条約(NPT)に署名しているため、核兵器の製造や取得は禁じられている。韓国が核兵器の製造や購入を試みれば、ほぼ確実に国際社会の制裁を受けるだろう。また、北朝鮮がその核優位性を失う前に韓国を攻撃する動機を与えることにもなる。

 北朝鮮の核戦力とロシア、中国との関係改善にもかかわらず、核開発を続ける金正恩氏は依然として不安を抱いているかもしれない。またウクライナ戦争との関連でのプーチン氏との協力を通じて、核の脅威を巧みに利用するという戦略的教訓を金正恩氏が学んだことはほぼ確実だ。金正恩氏はこれらの教訓を活かし、対立の際に韓国の同盟諸国による強硬な対応を抑止することができるだろう。


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