韓国が置かれた厳しい国際環境と米国の核関連政策の中で、自国の安全を確保していこうとすれば、やや遠回りをすることがあっても、最終的にはこれまでのラインを基本とするところに落ちつかざるを得ないように思える。
朝鮮半島における安全保障環境の変化
そのような意味での、李在明政権の韓国を取り巻く厳しい国際環境としては、本件記事に詳述されている北朝鮮に直接関連すること以外に、朝鮮半島を巡る安全保障環境の構造的変化が大きい。
本件記事でも触れられているが、朝鮮戦争に休戦が成立したあと韓国には1950年代終わり頃から90年代初めまで米国の戦術核兵器が配備されていた。当時、北朝鮮の核開発はまだ表面化していなかったが、70年代初めの米中接近により米国の対中抑止の必要性が相対的に低下したことを受けて、米国は在韓米軍を含む東アジアの米軍の再編を行う一方で、「ニクソン・ドクトリン」によって各国それぞれの「自助努力」を求めるようになった。これらが朴正熙大統領による核開発模索の背景にある。
これに対し今日は、当時とは逆に米中関係が緊張状態にあり、中国の東アジアにおける軍事活動は一層活発化している。加えて、北朝鮮の核戦力は戦略ミサイルから戦術核までメニューをそろえている可能性があり、70年代とは逆に大いに緊張が高まっている。
ところが同盟・パートナー国に対して米国は当時と同様、「自助努力」を求めている。さらに、トランプ政権によるグローバルな米軍再編により、在韓米軍は規模が縮小される可能性が高い。
そのような中で尹錫悦前大統領が核シェアリングを求めたのは軍事的には自然なことと思われ、これを米国が受け容れないのであれば、結果的に上記①~③のような措置をとる以外にないだろう。
