第一の留保については、「欧州」の地域限定のように聞こえるが、日本経済の崩壊の危機等も含まれるものと理解できる。これら二点に、「おだて」が効くためには相手が「おだて」に弱いことが必要との条件を付すこともできるだろう。
要するに、時と場合につき厳しく判断すべきということだろう。「おだて」の蔓延は、独裁者、狂人を生む土壌を作り、大国が不相応の力を振り回す卑屈な世界を作ることにもなる。
厳しい指導者との対話
今の状況は、二人の指導者によって引き起こされているとも言える。それは、ウクライナを侵略しているプーチンであり、他方で国際秩序を損壊し一方的、独裁的な言動を続けるトランプである。
今や指導者の危機の時代になっている。他国は、残念ながら、これらの指導者と一層厳しい対話、交渉を通じて、問題の解決を図り、乗り切る他ない。
また、中・長期的には問題を探知し、予防していくことが益々重要になる。今の問題は、冷戦の終わり方とも関係する。我々は、それを楽観し過ぎたのか。あるいは、その後の対応が甘かったのだろうか。
なお、欧州外交評議会ワシントン事務所長のシャピロは、スターマーのトランプ対応に関連して、①トランプへの「おだて」外交には罠がある、②それは単に会合の運営技術であり、政策形成ではない、③同盟国は「おだて」が戦略ではないことを理解すべきだ、トランプの取引主義には同盟国による集団的で、しかも執拗なかつ信頼できる強さによってのみ対応できる、④「おだて」は脆弱性を見せることになり、ゆくゆく新たな要求に屈服することになると批判している。

