2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月16日

 今回のマイクロソフト社の動きは、世界的に活動する同社の評判を懸念して自発的に行われたものだが、このことが示唆しているのは、イスラエルのガザでの戦闘や西岸の併合に利用されている西側民間企業の活動を制約し、イスラエル側に実質的な痛みを与えれば、イスラエルのパレスチナにおける問題のある行動を制約できる可能性があるということだ。

 ネタニヤフ首相の極右政権のみならず、一般のイスラエル人までもが二国家解決を拒否している以上、国際社会はイスラエルを非難するだけではなく、イスラエル側が実質的に痛みを感じる様な圧力を掛けなければならない段階に来ているのではないか。2年間で6万5000人以上の犠牲者は、国際社会として看過出来るものではない。

アラブ産油国は動くか

 そこで思い出されるのは、1973年の第4次中東戦争時にアラブ産油国(OPEC)が、イスラエルが占領地から撤退するまで米国、オランダ等のイスラエル支持国に対して経済制裁を課した第1次オイル・ショックの先例だ。

 アラブ産油国は、同胞のパレスチナ人が虐殺され続けているのを看過できないと思うのならば、今回は石油禁輸政策ではなく、西側主要企業にとって重要なマーケットであるアラブ産油国がイスラエルの戦争遂行能力を制約するよう西側主要企業に対して影響力を行使することは可能なはずだ。まず、アラブの同胞が行動を起こすのが筋だろう。

 今回、日本がパレスチナ国家の承認を見送ったことに対して国内で批判がある。しかし、パレスチナ独立国家の承認自体は、現在の悲惨な状況を変えないのみならず、極端にイスラエル贔屓のトランプ政権がへそを曲げて貿易関税問題で日本に対して一層強硬な対応をするリスクのみならず、東アジアの戦略環境がますます厳しくなる中、米国による安全保障の傘の信頼性を維持、強化するという見地から、やむを得なかったと思われる。

エネルギー確保は総力戦amazon楽天ブックスhonto
Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る