2025年12月7日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月17日

 トランプの施策が、国内投資の増大のように一見利益をもたらすような場合もある。しかし、民主主義と独裁の違いは、その結果に至るプロセスにある。公正で合法的なプロセスは、市民の権利を守り、長期的には経済をより良いものとする。

 投資家は、米国が法を守り、合意を尊重し、債務を履行するから米国を信頼する。トランプは政府への信頼を損なっている。

 トランプの強引なやり方は、長期的な繁栄や世界的な信用と信頼を犠牲にしている。しかも短期的にも1月の就任後、経済成長や雇用は鈍化している。

 トランプの介入は助けにならない。彼が取得したインテル株は新たな資金を同社に出す訳ではない。彼はむしろ、2022年法で既に受け取っていた補助金と引き換えに、政府へ部分的な所有権を渡すよう同社を脅迫したのだ。

 トランプは、自分の場当たり的で自己中心的な政策運営が「強硬で決断がある」と見せることになると信じているようだ。だが実際には、それは21世紀社会の中心産業など米経済に更なる混乱をもたらすことになる。

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恣意的で恫喝的な介入

 この社説の指摘は正論だ。トランプの経済政策、特にインテル支援策につき、「それは、トランプが米経済に気まぐれに介入し、まるで自分の家業の延長かのように扱い、国民全体に不利益をもたらす」ものだと厳しく批判する。トランプの介入政策は視座が狭く、公共政策と私的な取引の世界が曖昧で、公私の区別が限りなく危うく、常に癒着、腐敗の危険に満ちている。

 社説は、政府による私企業の救済は、オバマ政権のクライスラーやGM救済と同様、戦略を国民に明確に伝えた上で、法律に従ってやるべきだと言う。「トランプのインテルへの対応は、まるでベネズエラやロシアのやり方のようだ。政治指導者が脅しや侮辱で経営者を屈服させる手法だ」との批判は的確だ。トランプの介入は、恣意的で恫喝的だ。

 社説は、これまでのトランプによる酷い執政を例示する。残念ながら、トランプの法律すれすれの権力行使や法律違反と思われる行動にはもはや驚かない。しかし、米国民や世界はこれに慣らされてはならない。


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