態度を変えるトランプ
さらに、ホワイトハウス書簡が送付された大学とは別に、各州主要大学100校が名を連ねる「全米大学連盟」も去る3日、「コンパクト」について「大学への助成金と政治イデオロギーの連結を図る“最後通牒”とも言うべきものであり、断じて容認できない」とする声明を発表した。
これに対し、ホワイトハウス側は当初、「コンパクト」への回答締め切りを「10月20日」としていたが、その後、「締め切りにはこだわらない」として及び腰になっている。
トランプ大統領自身もこれまでのところ、保守系のテキサス大学以外の各大学の否定的反応を気にしてか、去る12日には、自身のSNSで「全米のどの大学であれ、『コンパクト』受諾の意思ある大学があれば、いつでも招待状を出す用意がある」と述べ、少しでも多くの受諾校を増やすことに躍起となっている。
「リベラリズムの温床」として狙うエリート校
いずれにしても、トランプ政権が今回、大学教育への政府介入を強めるこうした強硬策を打ち出した背景には、トランプ氏に対する岩盤支持層である南部保守派の間で、「エリート校がリベラリズムの温床になっている」との根強い偏見があるといわれる。
トランプ大統領はこうした保守支持層の主張を受け入れ、去る3月には、まず有名校の一つであるコロンビア大学(ニューヨーク)に対し、「大学内でユダヤ人学生差別やいじめが横行している」との理由で、同大学に対する4億ドル相当の研究助成金凍結を発表した。
同大学は批判を受けてただちに、対策を協議、政府の要求を丸呑みするかたちで、学内の「中東・南アジア・アフリカ研究センター」に「監督官」を新設する方針を打ち出した。さらに大学側は、大統領に恭順の意を表し、約束されていた助成金のうち約半額にあたる2億ドルを“罰金”のかたちで支払うことで妥協にこぎつけた。
続いてトランプ政権は去る4月には、「反ユダヤ主義が学内にはびこっている」などとして、ハーバード大学(マサチューセッツ州)に対する22億ドル相当の研究助成金の即時凍結方針を発表した。
これに対し、同大学は、表現の自由を保証した「憲法修正第一条違反」だとして、ボストン連邦地裁に告訴。地裁がその後、大学側の主張を受け入れ、「違憲」判断を下したため、ホワイトハウスは上訴の構えを見せている。
