2025年12月15日(月)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年10月26日

ヒロシマ・ナガサキに対するトルコ人の同情(sympathy)と反米感情

1421年竣工の古都ブルサのウル・ジャーミイの大天井。装飾タイル の文様は見応えがある。礼拝堂に敷き詰められた絨毯に仰向けで寝て見上げるのが最上 の鑑賞法

 筆者はこれまで75カ国を歩いたが敢えて親日国民御三家を挙げると中華民国(台湾)、トルコ、ポーランドではないだろうか。トルコ人の熱烈な親日ぶりに接して一つだけ違和感を覚えたのがヒロシマ・ナガサキである。トルコ人、特に知識人階層はヒロシマ・ナガサキへの原爆投下は軍事的には不必要であったと理解しており米国が日本を原爆の実験台にしたと米国のエゴを批判する。

 今回の旅行でトルコ人の大半が反米であると実感した。トルコは戦禍を被った他の欧州諸国同様に米国の経済支援、マーシャルプランの恩恵を受けたが半面で米国の有形無形の圧力・干渉により正常な経済発展が妨げられたと恨んでいる。

 例えば戦前は食糧自給率100%だったがマーシャルプランで米国産小麦を大量に輸入させられたお陰で国内産小麦の生産力が激減。農業に必要なトラクターも米国製に取って代わられた。飛行機を国産する総合的工業力があったのに戦後は欧米製造業の下請けに成り下がった、などなど。特に国産自動車の発展を阻害されたという恨みは共通した感情のようだ。

 どこまで客観的事実なのかはさだかでないが、米国産小麦受入のために長年に渡り米を減反して学校給食をコッペパンにして米国農務省の御意向に従ってきた日本と共通する事情がトルコにもあるように思われた。こうしたトルコ人の反欧米感情を背景にして日本人も原爆投下により強硬な反米に違いないと思い込んでトルコ人は益々日本人に親近感を抱くという構図があるようだ。

東日本大震災の報道がトルコ人の日本人への親日感情を更に強化

古代ギリシアのAssos遺跡の北にあるアイブジュクという小さな町の結 婚式。宴会場に新郎新婦が飾り立てた車で到着したところ。見物していたら「日本人の ゲストはこちらにどうぞ」と上席のテーブルに案内されご馳走を頂いた

 8月18日。自転車職人のアリは「日本人は東日本大震災で少ない水・食糧を分かち合った。2年前のトルコ・シリア大地震では水・食糧を独り占めしようとする被災者が目立った。また空き家から金品を略奪する行為が横行した。改めて日本人を尊敬する」と語った。

 8月24日。地中海屈指の美しい砂浜が広がるオリュデニスの雑貨屋の女子店員は東日本大震災の報道で日本人被災者が助け合う姿を見て感動したという。報道の具体的映像により日本社会に根付いている“相互扶助の精神”を理解することができたという。同じ地震国という観点から多くのトルコ人が東日本大震災の報道から相互扶助の精神を学んだと指摘した。

 同日、オリュデニスのビーチ近くのモスクで礼拝を終えた老人が日本人と知って声を掛けてきた。シリア国境に近いアンタクヤから来た老人は2年前のトルコ・シリア大地震で妻、長男、孫など家族の大半を失った。唯一生き残った次男一家と暮らしている。トルコは日本の建築基準とか耐震技術など先進的技術を学ぶべきであるが同時に日本人の忍耐力や相互扶助の精神を学ぶことが重要だと静かに語った。

以上 次回に続く

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