2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月12日

 現在の騒動にかかわらず、トランプ政権は両国関係を新たな水準に引き上げることができる。テクノロジー政策では、米国、インド、およびイスラエルや日本のような友好国との緊密な関係を築くことは、戦略的分野でのリーダーシップに向けた中国の努力に対抗する道筋を提供する。

 地域的な問題についての両国の利益は一般に整合的である。ネパール、バングラデシュ、ミャンマー、モルディブ、スリランカをその軌道内に引き込もうとの中国の努力は両国にとって脅威である。インド洋政策をインド、日本、豪州のような友好国と調整する米国の努力は、共通の安全を増進しニューデリーとの信頼関係を深めるであろう。

 パキスタンについても、両国関係は改善の方向にある。冷戦時代には、米国はパキスタンをソ連に対する同盟国として重宝していた。しかし、現出しつつある中国との冷戦では、パキスタンは北京を選んだ。トランプが長期的に好む国とはならないであろう。

 米印関係の改善は大統領にとって最も重要な業績の一つとなろう。それに失敗することは消すことのできない彼の経歴の汚点となろう、トランプがそのための方途を見出すことを希望する。

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米印が本当に求めていること

 トランプ政権による、インドのセンシティビティを考慮しない、また事前の協議もない唐突な行動は、非常に良くないことである。インドとの関係の悪化に伴い、インド洋地域に対するトランプ政権の基本的な戦略が見えない状態になっていることも非常に良くない。

 トランプ政権としても、このままで良いとは考えていないであろう。この論説によれば、貿易交渉は妥結に近づいているようであるから、まずこれを早く落着させるべきである。

 ロシアの石油を買い続けていることを理由に課した追加の25%の関税については(8月27日に計50%の関税が発動された)、10月22日、ロシアの石油企業RosneftとLukoilに対し制裁を発動したことにより、トランプ政権にはこの関税を考え直す余地も生じたのではないか(インド企業はこの制裁を受けてロシア石油の購入を停止したとの報道もある)とも思われ、これも落着させるべきである。

 一方、インドにも考えるべきことがある。8月31日、モディは天津で開催された上海協力機構首脳会議に出席し、習近平・プーチンの両氏と握手し、写真に収まり、あたかも多極化世界での結束を演出したかのようである。


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