2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月12日

 インドの国際関係のビジョンは中国のそれとは異なるはずである。インドにとって、注意深く構築されてきた米国との戦略的パートナーシップを放棄する利益は何もない。米国との関係は構造的なものである。

 米印は、中国の覇権の野心を掣肘(せいちゅう)することに共通の利益を有する。インドが大切に考える戦略的自律性は多極化世界の極の間を揺れ動くことではなく、米国との強固な関係を維持しつつも米国に呑み込まれることなく自身の利益を追求する空間を確保することにあると思われる。以上は、トランプ政権にインドの価値を認めさせる上で重要なことと思われる。

インドに求められること

 1980年代には、インドと中国の国内総生産(GDP)はほぼ同じ水準にあった。現在、インドはGDPで世界第5位の大国であるが、中国のGDPはその5倍に近い規模である。経済・軍事・テクノロジーの面で、両国の懸隔は甚だしく大きい。

 インドにはこの懸隔をできるだけ縮める努力が求められている。このことは、インド・太平洋における安定的な力のバランスを維持する上でのインドの価値をトランプ政権に認識させる上でも重要なことと思われる。

 日米豪印のQUAD(クアッド)の次回首脳会議がインドで予定されているが、これが早期に(年内にも)実現され、米国とインドの関係が再び軌道に乗ることが期待される。

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