政治思想史研究者の片山杜秀・慶應義塾大学教授は、幼少期よりSF小説に親しんできたという。その読書体験はその後の人生にどのような影響を与えたのか。また、国際情勢は混迷を極め、様々な危機が現実のものとして差し迫っている中、日本には様々な課題が山積している。果たして突破口はあるのか──。〝知の巨人〟に聞いた。
片山杜秀(Morihide Katayama)慶應義塾大学法学部 教授
1963年宮城県生まれ。思想史研究者。著書に『未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命』(新潮選書)、『11人の考える日本人 吉田松陰から丸山眞男まで』(文春新書)、『歴史は予言する』(新潮新書)、『大楽必易 わたくしの伊福部昭伝』(新潮社)など多数。
(写真・さとうわたる以下同)
1963年宮城県生まれ。思想史研究者。著書に『未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命』(新潮選書)、『11人の考える日本人 吉田松陰から丸山眞男まで』(文春新書)、『歴史は予言する』(新潮新書)、『大楽必易 わたくしの伊福部昭伝』(新潮社)など多数。
(写真・さとうわたる以下同)
SFの読書体験で
身についた「ある思考習慣」
私は少年時代から多くのSF作品を読んできました。
「読書体験」によって得られた様々なものの見方や考え方は、研究者としての背骨となり、私の人生観にも大きな影響を与えてくれたことは言うまでもありません。
SFの読書体験は、私の発想を「より大きく」「より広く」してくれました。なぜなら、過去・現在・未来や世界の様々な国・地域を跨ぎながら、自由自在に時代や空間を往来する思考習慣が自然と身についたからです。
そのためか、少年時代の私は、「もし本能寺の変で明智光秀が天下を取っていたら」とか、「太平洋戦争で日本がアメリカに勝っていたら」といった、ありえない歴史を空想するのが好きでした。陸上自衛隊が戦国時代にタイムスリップするという大胆な設定の半村良『戦国自衛隊』や、歴史改変を阻止するタイムパトロールものもよく読みました。
私が小・中・高校生だった1970年代は、SF小説が書店に大きなコーナーを占めているほど勢いのある時代でした。最も親しみやすかったのは、やはり星新一のショートショートです。その次は筒井康隆ですね。『時をかける少女』は後に原田知世さん主演で映画化されたことをご記憶の方も少なくないでしょう。その他に、眉村卓の『なぞの転校生』や光瀬龍の『夕ばえ作戦』など、多くの作品を貪るように読みました。
