唯一の例外は、2024年12月に崩壊したシリアのアサド政権だが、代わりにシリアは、スンニ派のイスラム過激主義グループのHTSが支配し、HTSは、スンニ派イスラム原理主義のトルコやカタールと部分的に同盟している。このスンニ派イスラム原理主義勢力は、ハマスにトランプ大統領の停戦案を受け入れさせるために手管を尽くした。
しかし、今回の停戦が、永続的な和平を確保するものにはならず、それどころかハマスを存続させるものであったことが徐々に明らかになっている。ガザのイスラム原理主義者(ハマスとPIJ)が、その主義主張を共有するスンニ派イスラム原理主義勢力と同盟するのは自然なことだ。
中東で米国とその同盟国は最有力な勢力であり続ける。しかしながら、その優越性により最終的な勝利を得るまでには至っていない。
確かにイスラム原理主義勢力の中でイランは相当程度弱体化したが、トルコとカタールがより力を付けている。イスラム原理主義勢力との争いは続く。
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壊れた三大軍事大国の鼎立状態
現在の中東は、中東で米国の主導する西側同盟国とイスラム原理主義者の二元論的な対立ではなく、より現実主義的な考え方が主導していると考えられる。確かに1979年にイランで起きたイスラム革命以降、一時期、中東では、それまでのアラブ民族主義に代わってイスラム原理主義が一世を風靡したが、イスラム原理主義は、その後、過激化してアルカイダ、イスラム国の勃興で頂点に達し、衰退している。
現在、中東の大部分は、より現実主義的、実利主義的な行動をしているように見える。例えば、ガザで7万人近いパレスチナ人が亡くなっているにも関わらず、アラブ諸国は傍観し、民衆も本気で政府を突き上げなかった。
イスラエルには、絶えず、外敵の脅威に晒されていないと国内を団結させ、米国からの援助を引き出す上で不都合だという事情がある。さらに、危機的状況が去れば失職して逮捕されるネタニヤフ首相としては、危機的状況が続かなければならない。
