2025年12月11日(木)

野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2025年11月19日

 中国が高市早苗首相の発言にこれだけ強烈な反発を示した原因について、さまざまな見方が語られているが、日本国内の議論の中で安全保障論が先行し、「台湾」というファクターの本質的問題がやや見過ごされている感がある。つまるところ、この件は台湾問題に関わるから中国がこれだけ強硬に反発しているという点は、基本事項として抑えなければならない。

(ロイター/つのだよしお/AP/アフロ)

 毛沢東は敵と敵との間に矛盾を作り出すことを戦術の基本とした。矛盾を作り出すとは、分断を生じさせることだ。今回の中国の過剰にも見える対日制裁と批判の言辞には、日本と台湾、台湾内部、そして日本内部の三点に鋭く楔を打ち込み、分断を作り出す狙いがあるとそれぞれ分析できるだろう。

中国が警戒する「日台関係」

 タイミングも悪かった。現在、台湾の頼清徳・民進党政権と中国・習近平政権との関係は最悪レベルにある。しかも、台湾はヨーロッパに対して外交攻勢をかけており、蔡英文前総統のドイツ訪問、蕭美琴副総統の欧州議会での演説など、台湾に得点を稼がれまくり、中国は拳が震えるほど怒りに溢れているはずだ。

 そこでの高市発言である。中国にとって「親台派」と疑っている高市政権が、中国と激しく敵対する台湾の民進党政権と、日台連携を強めていくことが許せないという点が大きい。

 その予兆は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)で高市首相が台湾の代表と会ったときにあった。中国当局はこれに強く反発した。

高市早苗首相のXより

 通常、日本の首相がAPEC加盟する台湾の代表と挨拶や会話を交わすことは珍しいことではない。だが、中国は噛みついた。それは高市首相が、その写真を堂々とSNSにアップし、良好な日台関係を称えたからだった。


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