日中首脳会談の受け入れでいったん一歩引いた形になった北京は、改めて疑念を抱いたはずである。やはり高市は根っからの親台派なのではないかと。
「台湾有事は日本有事」との言葉を広げたのは故安倍晋三元首相である。その安倍氏ですら、首相在任中は「台湾有事は日本有事」とは言わなかった。言及は退任後だ。それを、高市首相は就任直後から、国会の場の首相答弁としてよりクリアに台湾海峡危機が「存立危機事態」になりうると具体的に語ったのである。
この想定は日米安保の法理上、当然あり得ることである。だがそれを敗戦国の日本が堂々と口外はしない。そんな暗黙のルールが確かにあった。その一線を越え、日本の台湾関与が既成事実化していくのではないか。中国の懸念はそんなところだろう。
日本と台湾の結託と邪推
中国政治はなお人治の要素を色濃く残し、国際政治も権謀術数や陰謀で回っていると深読みする癖が抜けない。日本人がいくら否定しても、2012年の尖閣諸島国有化に際し、日本政府と石原慎太郎都知事(当時)とつながって中国を騙しているのだと疑い続けていたとされる。実際は、石原氏の「暴走」に、当時の民主党政権は苦慮していただけなのだが、共産党一党独裁の中国はそうした日本の多極的な政治構造が理解できないし、理解しようとしない。
今回の件にしても、日本と台湾(あるいは米国も)が裏で示し合わせて、台湾海峡への日本の関与を強める方針を打ち出し、習近平が掲げる「祖国統一」の最終目標である台湾の統一を妨害しようとしていると受け止めているはずである。
それゆえに、中国が今回の対抗措置で狙っているのは、高市政権と台湾の民進党政権の接近の阻止であるとみて間違いあるまい。高市首相については、自民党総裁に当選した時点から、台湾の頼総統はフライング気味にお祝いをSNSでアップし、首相選出後も高市発言に民進党側は好意的なコメントで呼応している。
高市首相は中国からすれば安倍元首相の後継者を自認する根っからの「親台派」と見えるかもしれないが、台湾に対する本人の関心は昔からそこまで強くはなく、台湾を訪問したこともほとんどなかったとされる。ただ、今年4月の訪問で台湾から大歓待され、台湾に積極的に寄り添う姿勢を示すようになったとみられる。
