2025年12月14日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年11月20日

 過去の事例では通関検査の遅れなどもそうだ。輸入される生鮮食品の検査が遅々として進まない。痛んで売り物にならなくなったころにようやく通関の許可が下りる。明らかに問題だが、単に検査が遅れただけであると強弁できる。

出入国といった行政手続きにおいても制裁のような対応がなされることも起こりうる( LewisTsePuiLung/gettyimages)

 税関検査は形式上「行政手続き」であり、政治的制裁として扱われない。この“建前”が、中国が報復手段として頻繁に使う根拠になっているからだ。

 旅行自粛も表向きは日本国内の治安悪化を理由としている。高市首相の発言に対応した正規の報復措置という建付けにすると、外交的に問題になりかねないので、別の理由にしているわけだ。

 民間企業も無縁ではない。地方政府や国有企業ほどには忠誠心を示す必要性はないが、一定程度は協力するそぶりを見せておかなければ、「売国奴」としてたたかれるリスクがあるからだ。

 特に敏感なのが常に世論の炎上リスクに直面しているインフルエンサーだ。2023年の福島原発処理水放出ではインフルエンサーが広告を拒否したことで、化粧品や日用品など日本製品の売り上げが下がった。一般の中国人はさほど気にしていない状態でも、広告量の減少が如実に業績に反映されたという。

 一般の企業も動いているビジネスを止めるまでの強い反応はないにせよ、新たな提携は控える、少なくとも大々的な発表はしないという炎上対策はとるだろう。

中国が「得をする」までやめない可能性も

 この動きはどこまで続くのだろうか。一つには時間とともに風化することはある。今はホットな話題なので、みながアクションを起こして忠誠心をアピールする段階である。だが、時間が経つにつれ、だんだんと忘れられていく。

 となると、そこまでアピールする必要はない。さらに時間がすぎるとほとぼりが過ぎたのではないかと、誰かが日本との交流を試してみる。そこで反発がなければ解禁と判断され、周りが追随していくという流れで進む。

 ただ、今回は中国共産党指導部が高市首相の発言を従来の立場を踏み越えたものと位置付けているため、発言が撤回されなければ、別の部分で中国側の“得点”を得ようとするだろう。

 尖閣国有化の後に、中国海警の船舶は尖閣近海で定期パトロールを行い、また定期的に日本領海に侵入するようになった。国有化によって日本側があげた得点に対抗するべく、中国側も領有権主張のための得点となる行動を行うようになったという建付けだ。今回の高市首相発言に対しても、なんらかの得点を狙うことになりそうだ。


新着記事

»もっと見る