「台湾問題」はさらにシビア
外交には形式上の対等原則があり、一方的な譲歩はありえないことが建て前となっている。中国は特にこの点を重視し、相手が新しい行動を取れば、自国も何らかの“交換措置”を講じるという発想が強い。今回の高市首相の発言は日本の視点からすると従来の主張に沿ったものであり新たな主張ではなかったが、中国側はそうとらえていないというボタンの掛け違えがある。
加えて、中国外交は損得にきわめて敏感だ。中国はすでに世界第二の経済大国に成長したが、長年にわたり途上国としての優遇措置を手放そうとしなかった。先日の国連総会で、李強首相が途上国としての優遇措置を放棄すると発表し中国が大国としての責任を果たそうとしているとアピールしたが、世界トップの工業力と世界屈指の軍事力を持つ国が途上国としての待遇を受けてきたほうが異例というべきであろう。
ことほどさように、利害にしぶい中国だけに、しかも核心的利益と位置付ける台湾問題ともなれば、容易に譲歩することはない。就任直後は無難な外交デビューを飾った高市政権だが、きわめてやっかいな問題に直面してしまった。
