2025年10月30日付の朝鮮日報社説は、米韓関税交渉は妥結したが韓国の対米投資計画合意は保護主義時代の幕開けを意味する、韓国には新たな課題が待ち受けている、と述べている。
ここ数カ月難航してきた米韓交渉は、最終的に合理的な妥協点を見いだした。特に韓国は、一部の政治勢力に見られる反米感情に流されることなく、国益を最優先に冷静に交渉を進めた点は高く評価される。
今回の合意には、韓国の主張が多く反映された。焦点となっていた総額3500億ドルの対米投資は、当初米国が求めた「全額現金投資」ではなく、2000億ドルを現金で、1500億ドルを造船協力事業として拠出する形で妥結した。
また、国内為替市場への衝撃を抑えるため、年間の現金投資は200億ドルを上限とすることも合意された。さらに、為替市場の不安定が予想される場合には、投資額や実施時期を調整するとの条項も盛り込まれた。大統領府によれば、造船協力事業に充てられる1500億ドルは、民間企業が主導し、現金投資に加えて保証方式も取り入れることになったので、為替市場への影響は最小限に抑えられる。
また、投資対象は両国の合同委員会で選定し、商業的に合理的な案件に限定することが覚書に明記された。損失のない元本と利子が保証された案件のみが実行される。加えて、元本と利子が全額回収されるまでの利益は両国が等分するが、20年以内に全額回収できなかった場合には、その利益分配比率が見直される。
交渉妥結により大きな障害は一つ除かれたが、安堵は禁物だ。今回の合意は「貿易戦争の終結」ではなく、むしろ韓国を繁栄へ導いた自由貿易時代の終焉、そして米国主導の保護主義時代の幕開けを告げるものだ。何より、米中対立の激化の中で進む世界的な供給網再編に、韓国は主体的対応が必要だ。
「安保は米国、経済は中国」という時代は終わった。米韓同盟を強固に維持しつつも、「経済領土」の拡大と技術の競争力確保に向けた抜本的改革が急務だ。
