2025年12月14日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月25日

注目される韓国での原潜の建造

 加えて、首脳会談では、韓国による原潜の建造が合意されたようだ。報道によると、首脳会談で李在明はトランプに対して「原子力潜水艦用燃料の供給を認めてほしい」と要請し、「ディーゼル潜水艦では北朝鮮・中国潜水艦の追跡活動に限界があり、韓国独自技術による通常兵器搭載の原潜を運用すれば、在韓米軍の負担軽減にもなる」、「核兵器搭載艦を造る意図はない」と説明した。

 これに対しトランプは、必要性に「共感」を示し、「協議を行おう」と応じたという。しかし、その後トランプはSNSに「自分は韓国が米国の造船所(フィリー造船所)で原潜を建造することを承認し、今後協議をすることにした」と書き込んだ。これには韓国も驚いたようだ。

 米韓の間には不可解な齟齬がある。トランプは、米国の造船再興の文脈で捉え、李在明は、核燃料の提供の文脈でそれを捉えていたのだろう。仮に米国で建造することになるとしても、この計画が前進するためには、資金の手当てや技術の確保、労働者の訓練、造船インフラの整備、議会との関係、国際的影響など問題が山のようにある。

 本件はいまだ紆余曲折があるだろう。朝鮮日報は別途の社説で米韓の相違に注目し、米国での建造には多くのコストと時間がかかる、韓国の必要原潜数が4隻であれば早く初番艦を韓国内で建造し、2番艦以降を米国で建造すべきだと述べている。

 さらに、幾つかの疑問が沸く。第一は、原潜の真の目的は何か。対北、対中国防政策なのか、あるいは国威発揚なのか、将来の輸出のためなのか。

 第二は、今回政権内でいかなる安保議論が行われたのか。対北朝鮮対応に原潜は最適か。半島水域を越えて大洋活動を想定しているのか。

 韓国の安保議論には、自主防衛派と同盟派があると言われるし、恐らく産業派もあるだろう。ナショナリズムも働く。いずれにせよ、安保については真剣な検討が必要だ。

 第三に、地域やそれを越えた世界への影響もある。原潜の輸出競争になっても困る。同盟国たる米国の責任ある対応が必要だ。

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