2025年12月14日(日)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2025年11月23日

第四の知恵:老後は“主役交代”でうまく回る

 夫唱婦随という古い価値観があるが、老後はむしろ逆でよいと私は思う。老いては妻に従ってよい。家内は長年、私の仕事人生を支え続けてくれた。これからの主役は、彼女でよい。私は「婦唱夫随」で構わない。むしろその方が家庭は円満となる。

 老後は、男が前に出るより、妻の判断に寄り添い、妻の生活リズムに自分を合わせる方が、生活は格段にスムーズになる。これは実感として断言できる。

第五の知恵:“お互いの弱さ”を恐れずに認め合う

 入院生活は、弱さをさらけ出す経験であった。しかし、弱さを共有できたときにこそ、夫婦の絆は深まる。老後とは、強さで支え合う時期ではなく、弱さで寄り添う時期なのだ。

「無理をしない」「頼ることを恥じない」「感情を隠さない」――これらを自然にできる夫婦は、老後が穏やかである。

第六の知恵:“二人で新しい生活リズム”を再設計する

 退院後の生活は、以前の延長線ではうまくいかない。病気を機に、夫婦の毎日のリズムを大きく見直す必要がある。朝の散歩を一緒にする。夕方の買い物を分担する。週に数日は「小さな外出日」をつくる。

 こうした新しい生活リズムの設計が、夫婦の第二の人生を豊かにする。これは夫婦の“共同プロジェクト”である。

第七の知恵:残された時間を“贈り合う”という思想で生きる

 老後とは、“時間”をどう使うかが人生の質を決める。若い頃とは違い、時間は有限であり、誰にも借りられない最重要資源である。だからこそ、「相手に時間を贈る」という発想が大切になる。

 家内とゆっくり話す時間。一緒に旅に出て夕日を見る時間。笑い合う時間。これらはすべて、互いに贈り合う最高の“人生資産”である。

まとめ

 夫婦の晩年は、競い合う時代ではなく、寄り添い合う時代である。私は病の体験を通して、ようやくその単純だが深い真理に気づいた。家事も、健康も、生活も、感情も、もうどちらか一方に背負わせる時代ではない。

 二人で同じ方向を向き、同じ速度で歩き、同じ景色を味わう――。その歩みこそが、老後の最大の幸せであると確信している。病が残してくれた“気づき”を胸に、私はこれからも家内と共に、静かに、穏やかに、しかし確かに歩んでいきたい。もしも妻が先に逝ったら男は後を追いかけるくらいがちょうどよいとさえ思うのである。

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