2025年12月11日(木)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年11月27日

 おこめ券に代替するやり方として、現金給付が挙げられる。世の識者と言われる人々は「現金給付はバラマキだ」と非難する。しかし、現金ならコメではなくパンやパスタやうどんの購入にも使える。コメの価格だけを引き上げることにはならず、おこめ券よりも国民を助ける政策となり得る。

 あるいは、アメリカのような食料品一般を買えるフード・スタンプでも良い。これも食料品価格全体を引き上げることなるが、供給も増えて、人々の生活は楽になる。

 日本の識者は、所得分配を悪化させるような政策に過敏に反応するが、農業保護が所得分配を不平等にすることには気が付かない。食品の価格を上げることは、生活支出に対し食料品支出の割合が高くなっている所得の低い人の実質所得を引き下げることになるのに、このことには目をつぶる。

食品価格が高いのは料理人を搾取すること

 外国人旅行客が「日本の外食は安い」と感激するが、外食の原料の食料品の価格は高い。アメリカのスーパーでは、それぞれ500グラムで、ステーキ肉(サーロイン)が2000円、トマトが300円、イチゴは800円くらいである。これに対し、日本の東京都心部では国産牛が5000円、トマトが600円、イチゴが1000円ほどである(総務省「小売物価統計調査」参照)。

 ステーキ肉やイチゴは質が違うというコメントが来るだろうが、それにしても日本は高い。食料品の価格が高くて外食の値段が安いとは、食事を作って売っている人の賃金が安いということである。

 外食産業の賃金は一般的に安い。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、産業別の平均賃金で「宿泊業、飲食サービス業」が269万5000円と最も低くなっている。これは所得分配を不公平にしていることに他ならない。農業の生産性を上げて食料品の価格を下げるべきである。

 これに対して、そんなことをすれば農家の生活が成り立たなくなり、ひいては国産食材がなくなってしまう。それでよいのかという反論があるだろう。


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