農家への所得補償で生産性向上を
解決策は、農家の所得と農産物価格を分離する戸別所得補償制度である。価格は市場に任せ、農家の生活は作付面積に応じて支払う戸別所得補償制度で維持する訳だ。
中小農家にまで戸別所得補償をすれば中小農家が農業から退出せず、規模の拡大が進まず、農業の生産性向上ができなくなるという意見があるかもしれない。しかし、現状でも中小農家は生産を続けている。
今より生産性向上の速度が遅れる訳ではない。そもそも、農家戸別所得補償を得て、かつ効率的により多く生産できる農家の所得はより高くなるわけだから、生産性の高い農家の増産意欲や効率向上意欲を削ぐわけではない。
国内価格の引き上げで農家を保護している日本と、農家戸別所得補償で保護している欧州連合(EU)、アメリカの農業生産額を比べると、1986~88年から2023年にかけて、ドル建ての価格で日本は0.9倍と低下しているのに、EUは2.4倍、米国は3.1倍と大きく増加している。もちろん、ここには日本の円安の影響も含まれているので、日本の農業生産額を為替レートで円建てにすると1.05倍となる。円建てにしても日本農業が伸びていないのは同じである(本欄「コメの価格が高騰の大きな要因の一つ!欧米と比べて見える大きな差、日本の農政が変わるべきこと」参照)。
この違いは、国内価格の引上げ政策よりも、農家への所得補償政策が農業の生産性を上げるということについて結果を出していることを示している。価格つり上げ政策では、生産量を減らして価格を引き上げることになるが、所得補償政策では生産量を減らす必要がないからだ。
価格のつり上げは何も生まない
おこめ券は米価を引き上げるだけで、消費者の利益にはならない。するなら、どの食品も購入できるフード・スタンプ(おこめ券で食料品一般を買えるようにしても良い)か、給付金にするのが良い。農家保護は戸別所得保障制度で行い、価格のつり上げを止めるべきだ。

