「このままでは京都の文化がなくなる」
そんな岡野さんは、近年の京都の変化をどう見ているのか。
「みんな、市内の町屋を残して風情を大切にと言うけれど、固定資産税や相続税がこんなに高い状況で、そりゃ無理な注文やな。次々にマンションになっとる。税制含めて、いい塩梅を考えんと、このままでは京都の文化がなくなる。これからも京都は日本人の心のふるさとであり続けてほしい」
さらに、近年の公共事業削減の流れについても懸念を示した。
「人が集まるっちゅうことは、上下水道に道路の工事が必要や。でも、現場を担う職人さんが減っとる。予算削減ありきでほんまにええんか、よく考える必要がある」
腹の据わった直言である。岡野さんはかつて、京セラ創業者・稲盛和夫さん主宰の「盛和塾」に入塾して折に触れ、稲盛さんの経営哲学や思想に触れてきた。
「原理原則を理解しておかんと商売は長続きせん。熱意や能力も必要やけど、一番大事なんは考え方。〝心を高める〟ことや」
取材中、岡野さんの手帳に貼られたシールが気になり、取材後に見せてもらうと、こう書かれてあった。「きっと今日はいい事がある。明日はもっといい事がある」──。
京都のことは何も知らないという岡野さんだが、実は京都をこよなく愛する熱き京都人だった。
