2025年12月14日(日)

令和の京都地図

2025年12月1日

「このままでは京都の文化がなくなる」

 そんな岡野さんは、近年の京都の変化をどう見ているのか。

 「みんな、市内の町屋を残して風情を大切にと言うけれど、固定資産税や相続税がこんなに高い状況で、そりゃ無理な注文やな。次々にマンションになっとる。税制含めて、いい塩梅を考えんと、このままでは京都の文化がなくなる。これからも京都は日本人の心のふるさとであり続けてほしい」

疏水の工事は岡野組の原点である

 さらに、近年の公共事業削減の流れについても懸念を示した。

 「人が集まるっちゅうことは、上下水道に道路の工事が必要や。でも、現場を担う職人さんが減っとる。予算削減ありきでほんまにええんか、よく考える必要がある」

 腹の据わった直言である。岡野さんはかつて、京セラ創業者・稲盛和夫さん主宰の「盛和塾」に入塾して折に触れ、稲盛さんの経営哲学や思想に触れてきた。

 「原理原則を理解しておかんと商売は長続きせん。熱意や能力も必要やけど、一番大事なんは考え方。〝心を高める〟ことや」

 取材中、岡野さんの手帳に貼られたシールが気になり、取材後に見せてもらうと、こう書かれてあった。「きっと今日はいい事がある。明日はもっといい事がある」──。

 京都のことは何も知らないという岡野さんだが、実は京都をこよなく愛する熱き京都人だった。

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Wedge 2025年12月号より
令和の京都地図 古くて新しい都のデザイン
令和の京都地図 古くて新しい都のデザイン

時代が変わるたび、京都は常に進化を遂げてきた。「千年の都」京都は今後、どう変わってゆくのか。日本人のみならず、世界中の人々を惹きつけてやまない魅力や吸引力はどこにあるのか。京都に根を張る各界の先駆者たちに聞く令和時代の新しい京都地図とは─。


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