またスキマバイトのもう一つの利点として、非正規雇用以上の自由度・裁量性の高さや人間関係のしがらみのなさがあげられる。この点は、パートやアルバイトと比較してみるとよくわかる。
通常、パートやアルバイトは、雇われた企業で、同じ会社の社員と一緒に働く。当然、完全に自分の都合で働くことはできず、繁忙期などは休みたくても休めない場合もあるだろう。スポットワークの場合、業務が切り分けられ、数時間から1時間単位で求人が出されるので、ワーカーは自分の都合の良い時間に働くことができる。さらに、ワーカーは、その日限りの外部の人間であるため、人間関係のしがらみもない。
このような働き方は、これまでの非正規雇用には見られなかった特徴であり、自由度、裁量性、人間関係のしがらみのなさを求める人にとって魅力的な働き方といえる。
スポットワークが抱える課題
このようにスポットワーカーは、非正規雇用以上に裁量性が高い一方で課題もある。それはスポットワークでフルタイムに近い時間就業した際に、社会保険未加入となり、社会保障から排除される可能性がある事だ。例えば、フルタイムに近い時間を就業した際に、社会保険の加入義務が発生する可能性があるが、Timeeではスポットワーカーの利用制限として、1つの企業で受け取れる報酬額は1カ月で7万8000円未満であり、雇用主に社会保険加入義務が発生しない。
これは、違う見方をすれば、ワーカーが利用制限の範囲内で、1カ月間に複数の企業で仕事をすることは可能であり、その結果として、ワーカーが社会保険未加入になることも考えられる。そもそもスキマ時間で働くのだから、フルタイム並みに働くスポットワーカー自体が少数かもしれないが、理論上は発生し得る社会保障上の課題といえる。
もう一つの課題は、スポットワークの平均時給が決して高くないことである。スポットワーク研究所「スポットワーク市場 クォータリーレポート」によれば、25年5月~7月期の三大都市圏のスポットワーク平均時給は1179円となっている。これではフルタイム並みに働いても1カ月で19万弱にしかならない。
その理由の一つがスポットワークの仕事が比較的にロースキルで単純労働中心であることだ。例えば、先のTimeeの決算資料によれば、求人を出している事業者の業種は、物流が43%、小売が29%、飲食が15%となっている。具体的な仕事は、物流が梱包、ピッキング、検品、飲食がオーダー、配膳、洗い場、小売がレジ、品出し・陳列などロースキルの仕事が中心である。

