〝バカな質問〟が出来ることが
AI時代の人間の価値になる
未来を予測するうえでは欠かせない存在であるAI。「いま注目している超最新トピック」というテーマでも多くの教授陣がAIに絡んだ項目を挙げていた。
黒田氏は「AIが身体性を獲得し、知能を発現するフィジカルインテリジェンス」に、生物工学を専門とする合田圭介氏は「AIで科学そのものを生み出すAI for Science」に注目していると語ると、話はAIの今後の可能性に広がっていった。
雑談が白熱する中、情報工学を専門とする江﨑浩氏が「AIが発展しすぎると、本来持つ多様性がなくなってしまうのでは」と疑問を投げかけると、免疫学を専門とする新藏礼子氏がそれに同意した。
「過去のデータのみを蓄積しているAI頼みでは、新たな発見は生まれてこない。今年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文先生の研究もそうだが、AIに『制御性T細胞があるか』を聞いていたら『ない』と答えて終わりになってしまう。AIはどれだけすごくても最後は人間の英知が勝つと思う」と話すと会場からは自然と拍手が起こった。
聴講者からの質問を受け付けた質疑応答では、東大受験を描いた漫画『ドラゴン桜』(講談社)の作者である三田紀房氏から「AIの登場によって年号の暗記など、勉強する意義を失っていると感じる」という問いが投げかけられた。
これに対し、江﨑氏は「今は全てをオンラインで勉強できる時代にあり、若者たちのベースの知識の学び方は決定的に変わってきている。ただ、研究室の学生たちを見ていても、オンラインを活用していても自分の頭で考えて勉強している人が一番面白いアウトプットを出せている。受験で点数が取れるかは重要ではない」と話した。暦本氏は「これからは、賢さというものはホモサピエンスではなく、AIのバリューになる。むしろ、いかに自由な発想で〝バカな質問〟が出来るかが人間の価値となる」と述べ、AIとの〝上手な〟付き合い方についても雑談が交わされた。
