2025年12月25日(木)

プーチンのロシア

2025年12月25日

 この米国の姿勢がウクライナのみならず、将来の欧州の脅威になっているため、欧州諸国は(ロシア寄りのハンガリーおよびスロバキアを別にして)、何とか米国を説得して、自分達の立場を仲介外交に反映させようと努力している。

プーチンも受け入れない28項目提案

 こうした構図の中で、28項目の提案は米側からウィトコフ中東担当特使およびトランプ大統領の娘婿クシュナー氏、ロシア側からドミトリエフ大統領特別代表が参加して、作成された。報道によれば、ウクライナの領土割譲とその承認、ウクライナ軍の規模縮小、ウクライナのNATO加盟断念、対露制裁の段階的解除、ロシアによる戦争犯罪の責任追及の免除等が盛り込まれており、ロシア寄りであることは明白である。

 ウクライナや欧州にとって到底飲めないことは驚くに当たらないが、興味深いことに、プーチン大統領もそのままでは受け入れられないという反応を示した。この28項目の内容から、ロシアが何を恐れているかが透けて見える。

関係国の交渉の特徴

 トランプ政権の仲介外交の顕著な特徴(あるいは、欠陥)として、国務省、国防省、米中央情報局(CIA)等政府機関の経験豊かな専門家および長年にわたって蓄積されてきている情報・分析が活用されないまま(あるいは、無視されて)、外交の「素人」であるウィトコフ中東担当特使らが主導するロシア寄りの仲介が行われていることが指摘されている。そして、この米国の外交に対して、ウクライナや欧州諸国が必死に巻き返すというパターンが繰り返されている。

米国のウィトコフ中東担当特使(右)は外交の「素人」と言われながら交渉を主導する(代表撮影/ロイター/アフロ)

 ウクライナに関して言えば、24年夏、軍事力のみではこの戦争を有利に終わらせることが困難であり、欧米や日本等の同志国の支持と支援を取り付けて、外交で停戦・和平を目指すという方針に変更して以来、その外交努力は一貫している。

 ロシアは、自らも軍事的経済的に大きなダメージを受けていることを隠す巧妙な宣伝を通じて、国際社会、特に、仲介者の米国に対して、ロシアが圧倒的に有利に戦闘を進めているという印象を植え付け、ロシア寄りの停戦・和平を実現しようとしている。

 筆者がベルギーの首都ブリュッセルを訪問した際も、「ロシア軍有利」というロシア側の宣伝力をまざまざと感じた。ただ同時に、ロシア経済や継戦能力が想像以上にダメージを受けており、ロシア国内にも早期停戦を模索する動きがあることも指摘されていた。

 侵略国ロシアが長年の戦闘にもかかわらず戦場で獲得できなかったものを外交で手に入れるようなことは、侵略されているウクライナや欧州が受け入れるはずはない。案の定、ウクライナや欧州の巻き返しで米国が立場を修正した結果、ロシアは、ウクライナおよび欧州を非難し、戦闘継続の姿勢を見せている。


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