2025年12月25日(木)

プーチンのロシア

2025年12月25日

停戦・和平に向けた重大局面

 既に4年近く続いているこの戦争は、侵略国ロシアと被侵略国ウクライナ双方に大きな被害をもたらしている。両国とも停戦・和平を真剣に追及すべきタイミングに来ていることは明らかである。

 ロシアに関して言えば、経済は着実に悪化し、財政は逼迫し、118万人にも上る兵士が戦死傷しているにもかかわらず、本来の目的であるウクライナ支配はもちろんのこと、22年9月に一方的に併合宣言した東部四州(ルハンスク、ドネツク、ザポリッジャ、ヘルソン)の完全占領すらいまだに覚束ない状況である。特に、25年春以来の東部ドネツク州ポクロフスク・ミルノフラード方面に対する攻勢においては、無理な作戦を繰り返して、毎日甚大な人的物的損失を被っており、何度も占領宣言をしているにもかかわらず、実際には完全制圧できないままに、攻勢が失速しつつある。

 他方で、ウクライナは、自前のドローンやミサイルによるロシア領内の軍事目標に対する攻撃強化によって、徐々にロシアの継戦能力にダメージを与えているが、同時に、連日連夜のエネルギーその他の民生インフラに対するロシア軍の激しい空襲の結果、民間人に多くの死傷者を出し、停電に苦しんでいる。

 この拙稿を書いている12月下旬現在、米国が仲介する外交が実際に停戦・和平をもたらすかどうか、極めて重大な局面を迎えている。

 米、ウクライナ、欧州の三者間の協議を通じて、現在できつつある共通の提案は、当初のロシア寄りの28項目から、ウクライナにとって不利な項目が落ちて20項目に整理されるとともに、ウクライナの要求する「安全の保証」に関しても、NATO加盟に替わる内容、すなわち、ウクライナ軍の強化、欧州の有志国部隊のウクライナ駐留、米国の支援等が盛り込まれていると報じられている。唯一残っている領土の扱いに関しては、引き続きウクライナ・米の間で12月下旬に協議が予定されている。

 他方で、ロシアは、早々とこの共通提案に対して、難色を示し始めている。プーチン大統領は、外交による解決を望んでいると主張しながらも、ウクライナや支援国が真剣な対話を拒否するなら、ロシアとして軍事的手段で自らの歴史的領土を解放する姿勢を崩していない。

 しかしながら、12月下旬の米・ウクライナ協議の直後には、米露協議も予定されており、ロシアの一見強硬な姿勢の裏に、4年近く続いている全面的侵攻からの疲弊を感じるのは筆者ひとりだけではあるまい。

今、何が必要か

 米国の仲介外交が重大な局面を迎えている今こそ、改めて欧米や日本を含む同志国がウクライナに対する財政、軍事、人道支援を増強するとともに、ロシアに対して制裁等の圧力を強化する必要がある。

 25年9月、一年振りにキーウを再訪した筆者に対して、ウクライナ政府高官は、「この戦争を有利に終わらせるためには、少しでも戦線を押し戻すとともに、ロシアの継戦能力を削ぎ、一般のロシア人にも戦争の惨禍を直接に感じさせること、そして、欧州の後押しを受けて、不安定で信頼感に欠ける米国の仲介外交を後押しするしかない」としみじみと述懐していた。現在、事態は、彼の言葉通りに推移している。

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