2024年12月23日(月)

地域再生のキーワード

2014年7月31日

 もともと商店街の酒屋の息子だった渡辺さんが、菊池の農家の人たちから信頼されるようになったのには一つの理由がある。

 渡辺商店は農産物を買い取る時に、決して買い叩かないのだ。

 「農家のじいちゃん、ばあちゃんの言い値で買い取ります。それに利益を乗せて売れば良いだけのことですから」と渡辺さん。生産者の思いをつづった「ストーリー」を商品説明に付けてネットに載せると、都会の消費者は味だけでなく、安全や安心なども「ブランド」として認知してくれる。

棚田農家の皆さん

 実際、6月上旬時点で「自然派きくち村」のホームページに載っている無農薬・自然栽培米で最も販売価格の高いものは5キロ5150円。60キロに換算すれば6万円を超す。良いモノを高く売るのが「商人」だというのだ。

 加工品もこだわりを貫いている。無農薬米で作った焼酎「蔵六庵」。放牧ジャージー牛のミルクから作ったアイスクリーム「至福のバニラ」。自然栽培米・天然調味料を使った「原農場の米せんべい」。それぞれに製品になるまでの逸話が語られている。

 農協に納めるよりもはるかに高い値段で買い取って、それでも売り切る自信があるのは、「消費者が望んでいる本当に安全なものを作ってもらっているから」だと渡辺さん。化学物質に対するアレルギーの広がりなどで、「自然なもの」へのニーズはどんどん広がっている。そんな都会の声を農家に伝え、本物を生み出し、その取り組みを消費者に情報伝達していく。渡辺商店の仕事は単にモノを仕入れて売っているだけではない。


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