注目されるインドの動き
ベネズエラ産原油の輸出先で注目すべき国はインドである。インドの近年の石油政策については、22年2月のウクライナ戦争開始以降、国際的な制裁の影響で価格が割安となったロシア産原油の輸入を大幅に拡大させた。
ロシアからの原油輸入量は同年3月以降増加を続け、24年10月には月間1038万トンと過去最多を記録した。その結果、従来の主要供給元であった中東諸国を上回り、23年以降はロシアがインドにとって最大の原油供給国となっている。
ロシア産原油の確保は、石油の安定確保や中東産への依存低減にもつながった。また、石油製品輸出国としてのインドの地位向上にも寄与している。
インドは、世界有数の石油製品輸出国として、各地から調達した原油を精製し、約160の国・地域に供給している。特に、ウクライナ戦争によってロシア産石油製品が国際市場から排除される中、インドは欧州市場への輸出を拡大しており、高い精製マージンも相まって、その存在感を強めている。
こうした状況を受け、トランプ政権はウクライナへの攻撃を継続するロシアからインドが大量の原油を輸入していることに不満を抱いている。このため、トランプ政権は大統領令により、既存の相互関税25%に25%を上乗せした、合計50%の関税を課し、インドに対しロシア産エネルギーの購入抑制を迫っている。
インドの財閥系民間企業リライアンス・インダストリーズ(Reliance Industries)は1月8日、条件が整えば、ベネズエラ産原油の購入を検討する意向をロイター通信に明らかにした。
同社が西部グジャラート州に保有する2カ所の製油所は、合計で日量約140万バレルの原油処理能力を有し、ベネズエラ産のような重質油にも対応可能な設備を備えている。また、インド石油公社(IOC)およびヒンドゥスタン・ペトロリアム(HPCL)も、条件が整えばベネズエラ産原油の購入を検討する意向を示している。
インドはかつてベネズエラから原油を輸入していたことがある。しかし、18年のベネズエラ大統領選挙を不正と見なした第一次トランプ政権は、マドゥロ大統領の2期目就任を認めず、翌19年に同国の石油部門に対する経済制裁を発動した。制裁の影響により、インドは当時原油供給国として第5位(シェア約7%)を占めていたベネズエラからの輸入を、大幅に縮小せざるを得なくなった。
今後、インドはトランプ政権からのロシア産原油購入に対する圧力を和らげ、ロシア分の減少分を補填することを目的に、ベネズエラ産原油の調達を積極的に進める可能性がある。インドは「世界の製油所」として、欧州やアジアなど世界各地への石油製品供給を継続するためにも、ベネズエラを含む多様な原油調達先の確保を必要としている。


