現在の展開は、ベネズエラ側がマドゥロ夫妻と石油利権を差し出し対米協力路線に転換することとの引き換えに、米側が現体制の維持を保証し制裁を解除するとの取引にベネズエラ側が応じたことにより実現したものである。従って、米国としてもベネズエラ産石油の販路と収益を抑えるシステムが確立し、石油産業のある程度の再建が実現するまでは、現行体の継続が前提となっている。
トランプが民主化移行のタイムテーブルを示すことは望ましいが、今直ちにできることではない。ベネズエラでは、与党支持層では米国に対する反発が全く収まっておらず、ロドリゲス暫定大統領も、国内向けに対米非難を繰り返しつつも、米国に対しては融和的な態度を取り、米国の要求に応じた法整備を進める方向に舵を切る等国内政治上は綱渡りのような状況が続いている。
軍、警察、民兵組織を掌握するカベージョ内相やパドリーノ国防相らとの間の潜在的な権力争いの可能性もあり得る中で、トランプとしては、ロドリゲスの権力基盤の確立をまず見届ける必要があろう。
時間が必要
トランプは18カ月でベネズエラの石油産業を再建する旨述べているが、制裁前でも100万BD(=Barrels per Day、1日当たりの原油生産量)前後に落ち込んでいた原油生産を最盛期の350万BDあるいはそれ以上に増産することは容易ではなく、米国石油企業にとっての利益も必ずしも明確ではない。それゆえ、新規の大型投資はそれほど進まない可能性があり、石油業界からの民主化の要望は期待できない。
他方、米国政府としても、石油収益管理を梃子にして、麻薬取り締まりや移民の管理、中国、ロシア、イラン、キューバとの関係遮断、特にキューバへの石油輸出停止による対キューバ圧力等、ドンロー主義に沿う成果としては十分とも言える。
いずれにせよ、ベネズエラの体制転換は時間をかけて取り組むべき課題である。現段階で民主化のための道筋を明確にすることも困難であろう。
なお、ベネズエラ憲法上、暫定大統領の任期は最大180日までで、その後30日以内に大統領選挙をすることとされている。何らかの理屈で選挙が延期されることもあり得ようが、その頃までには、トランプ政権としても、政権移行へ向けてのタイムテーブルをベネズエラ側とすり合わせる必要があろう。

